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 屋上


「うわっ絶景ねーっ」


 塔の屋上の欄干に身を乗り出してマイが外を眺める。僕もそれにならう。緑色の樹冠がまるで、海のように眼下を埋め尽くしている。それが風で揺れ、まるで波がたっているみたいだ。

 かなり長い時間延々と階段を登り続け、やっと屋上に到着した。しかも歩き慣れてないノノが幾度ともなくダウンして、最終的には諦めて、僕が背負う事になった。さっきしこたま飯食ってただけあって、小柄な体格の割には鬼のように重かった。しかも悲しい事に背中にはノノの胸の感触はなく、代わりにブヨブヨした腹が当たってかなり不愉快だった。なんか、背中がしっとりしていたのも更に不快だった。


「頑張ってここまで登ったかいがあるってもんだよね。僕はやったことないけど、高い山に登る冒険家ってこういう景色を眺めるために頑張ってるのかもしれないね」


 ラパンが樹の海を見ながらしみじみ言っている。


「冒険者と冒険家って何が違うの?」


 ミネアが問いかける。


「冒険者って僕たちみたいに、冒険を仕事にしてる者だけど、冒険家っていうのはその中でも、誰も行った事が無い所を目指す者の事だよ」


「てことは、アタシ達も今は冒険家ね。ここに来たのはアタシ達が初めてじゃないの?」


「娘、何いってるのかしら、ここはあたしの家だから冒険も何もあたしが毎日ここには来ているわ。あなた達には綺麗に見えるかもしれないけど、あたしには見慣れた景色でしかないわ。けど、よく見ると本当に綺麗だわ。なにも変わらない毎日で心が麻痺してたのかもしれないわね。美味しいものを食べて、体を動かしたから、より、違って見えるのかもしれないわね」


 ノノは遠い目で眺めている。けど、いつお前が体使ったのか?


「けど、たまには階段登るのもいいものよね。まあ、いつもは転移しているから」


 ん、コイツ何言ってるんだ?


「おい、お前半分も階段登ってないだろ。転移、転移って言ったよな? もしかして、俺たちも一緒に転移できたのか?」


「当然よ、ここはあたしの家だから、ここでは好きな所に何人でも転移できるわよ」


「おい、じゃあ何のために苦労して階段登ったんだ?」


「食後の運動に決まってるじゃない。外の世界に出るんだから、しっかりダイエットして、昔の美貌を取り戻さないと」


「そんなん知るか! お前マジ重かったんだぞ!」


 僕はつい我慢出来ず、ノノの首に手を伸ばす。


「まって、ザップ、ごめんごめん」


 ノノは僕の手をタップする。締め落としてやろうかと思ったけど、すぐに手を引っ込める。奴の汗でヌルッとしたからだ。


「もうっ、レディに対して乱暴ね。ザップ、あんたもてないでしょ」


「余計な御世話だ。本気で締めようか?」


「まあ、ザップ、良い景色が見られたからいいじゃない。それで、ノノ、どっちに行けばいいの?」


 今日はマイに免じて許してやる事にした。


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