塔へ
「とってもいい匂いね。食べていいのかしら」
ノノが両手にナイフとフォークをにぎにぎして肉をガン見している。網から焼けた肉を直接食べる気なのか? 熱いと思うぞ。
「ノノさん待っててね。もうすぐ焼けるから」
マイが肉と野菜をノノによそう。野菜をよそう時にノノは少し嫌そうな顔をしたが、コイツには野菜は必需品だろう。体型的に。
やはりと言うか、予想通りと言うか、ノノはガンガン食べまくる。まるで、アンを見ているようだ。コイツが仲間になったら食費はかさむだろうな。それだけは避けないと。
マイだけでは追いつかないので、僕も肉を焼くのを手伝う。コイツさっきサンドイッチをドカ食いしてたのによくもこんなに食べるよな。なんか昔、絶食してたのにいっぱいたべたら胃がビックリして場合によっては死ぬ的な事を聞いたけど、大丈夫だろうか? まあ、この元気よさを見る限り大丈夫だと思うが。
「ところで、このお肉とっても美味しいけど、何のお肉なの? 鶏、カエル、それともトカゲ? さすがに、ただでご飯貰ってばっかりじゃ悪いからそれ相応の対価は払うわよ」
ノノが口を休めて聞いてくる。そうか、そんなに気に入ったのか。多分、この肉はアレだよな。
「まあ、トカゲに近いものかな?」
僕はマイの方を見る。マイは首をたてにふる。
「多分それは古竜アダマックスの尻尾だよ。ザップ、ドラゴンとトカゲは全くの別物だ。僕たちをトカゲ扱いするな」
ぽっちゃりになったオブが答える。さすが身内なだけあって見ただけで何の肉か解るのか。でも、なんでドラゴンはトカゲ呼ばわりされると怒るのだろうか? 見た目的にはかなり似てるのに。
「え、古竜アダマックスの尻尾? あっちゃー、なんであんた達そんなあり得ないようなもの持ってるのよ。しょうが無いわね。これに相当するものって言ったら、アレくらいしかないわね。もうヤケだわ。あんた達どんどん肉焼くのよ」
僕たちも参加して、それからバーベキューを心ゆくまで楽しんだ。当然1番食べたのはノノだった。
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「とりあえず、美味しいもの食べにどっか街に行こうとおもったけど、あんた達について行った方が良さそうね。ゴルドランに効果ある魔法を探してるんでしょ、ご飯のお礼もあるし、あたしんちでとっとと選んで急いで行くわよ」
ノノはポコンと出たお腹をポンポン叩くと立ちあがって、黒い塔の方へ歩き始めた。本当に自由な奴だな。
「マイ、片付けは後にしよう」
僕らもそれに続く。
ノノは塔の前に立ち装飾華美な扉の前に立つと、右手に歩き始める。そして、扉を通り過ぎ塔の壁よりに空中を歩き始めた。
「こっちが近道なのよ。見えない材質の階段よ。手すりもあるからそれに摑まって登ってきて」
これは嫌らしいな、多分、ノノが一緒じゃなかったら、僕たちは問答無用で門を開けて入っていただろう。そして、その中にはえげつない仕掛けとかあるんだろうな。
これまでの成り行きで、ピオンが先頭で、見えない階段を登り始める。ノノが言った通り、手すりもあり、僕たちは恐る恐る階段を登る。けど、やはり見えない階段は恐ろしい。ノノを先頭にピオン、僕、マイ、ラパン、ミネア、オブの順に登って行く。太って体力がないのか、元々子供だから体力が無いのか、オブが遅れ始める。
「オブ、急げよ」
一応声をかけてやる。
「はーい」
オブの声は何故か楽しそうだ。
「なんか、オブ君って上ばっかりチラチラ見てないか? あ、もしかして、オブ君、ミネアのスカートの中見てるんじゃないか?」
ラパンの言葉にミネアの表情が変わる。
「アンタ、なに無断でアタシのパンツ見てるのよ。死ね、クソガキッ!『岩石召喚!』」
ミネアが魔法で出した丸い岩が階段を転がって行く。
「見てない、見てないってーっーっーっーっ」
エコーを残しつつ、オブは全速力で階段を降り始める。まあ、オブだから死にはしないだろう。