逃走
すみません、何故か同じ話が被って投稿されてたので、削除しました。
「結界が、結界が無くなったわ……」
ノノは呆然と立ちすくみ焦点の定まらない目で、結界があった方を眺めている。その頬には一筋の涙が。
オブの話したことから類推すると、オブ達が地下に封印される前から彼女はここにいたと思われる。気の遠くなるような年月、彼女はここにいたのだろう。人間って本当に嬉しかったらこうなるのか。どのような思いが彼女に去来しているのかは解らないけど、感動に近い喜びを噛み締めているのは解る。
「あ、ありがとう」
彼女は会って今までで最高の笑顔で僕を見る。
「何してやがるんだーっ!」
ザップハウスの入り口を勢いよく開けて、ぽっちゃりになったオブが走ってくる。何そんなに慌てているんだ?
「フフッ。やっと、やっと出られたわ。美味しいものを食べて食べて食べまくるわ!」
そう言うとノノは弾かれたかのように森の奥の方、塔と反対側に向かって駆け出した。
「えっ、どこ行くんだ?」
僕の声をノノはガン無視だ。聞こえちゃいない。
「ザップ、お前が何したのか解ってるのか? 最強最悪最低の生き物を世に放ってしまったんだぞ」
オブがぶるぶるの頬肉を震わせながら口角泡を飛ばす。
「ノノさん、行っちゃったわね。じゃ、どうするー?」
マイがのほほんとした声でノノが行った方を見ている。慌てていないって事はなんか策があるんだろうな。僕もだいたい見当がつく。
「お前たち、ぼさっとしてないで、早く妖精王を捕まえろよ」
なに興奮してるんだ? 捕まえるなんて面倒くさい。
「オブ君、じゃあ捕まえて来て。悪いけど、僕は君みたいになりたく無いな。サンドイッチじや物足りなかったから、バーベキューでいいかな?」
ラパンはそう言うと、収納からバーベキュー用のコンロを出す。そしてマイと目配せする。
「何、呑気にバーベキューの準備なんかしてるんだ? アイツを捕まえないと大変な事になるぞ」
「そっかー。オブは魔法でお腹いっぱいだからバーベキューはいらないのね。アタシがあんたの分みっちり食べたげるわ。早くノノを追っかけなさいよ」
ミネアは妖精から人間になると、せっせとテーブルや椅子などのセットを始める。ピオンもそれを手伝う。そっかそう言う事か。
「僕もバーベキュー食べるぞ、それとこれとは話が別だ!」
「じゃあ、オブ君、座ってゆっくりしてなさい。あたし達が準備するから」
マイはオブを引っ張って椅子に座らせる。
そして、ピオンがコンロに火をおこし、バーベキューの網が温まったところで、マイが肉や野菜を出して焼き始める。そして、いい匂いが充満し始めた。
僕は息を大きく吸って、
「おーい、ノノ、ご飯だぞーっ!」
「はーい、今、行くわーっ」
弾丸のようにノノが走ってきて、テーブルについた。チョロすぎだろ。