真意
「なあ、聞きそびれてたが、お前、この前何がしたかったんだ」
僕はオブこと、黒竜王オブシワンに問いかける。
ここはザップハウスのリビング。僕とオブ以外はせわしなく塔に向かうための準備をしている。マイは調理、ラパンとミネアは衣替え、ピオンは武器の手入れだ。
僕とオブはマイが淹れてくれた美味しいコーヒーを口にしている。ここでは気があって、僕もオブもミルクと砂糖、どかもりだ。
「なにがしたかったって、なんの事だい?」
「お前、アカエルと融合して暴れ回っただろ」
「ああね、詳しい事は本体に聞かないと分かんないけど、やりたかった事は聖教国の殲滅だよ」
ちょっとお買い物に行って来ます的に、さらりと事も無げに物騒な事言いやがる。
「おいおい、殲滅って、なんでだよ?」
「君は聖教国の教義をしらないのかい?」
「それくらい知ってるよ。光の神を信じる事だろ?」
「それだけじゃないよ。光の神を信じるだけじゃなく、その他の神や神に準ずる者を殲滅する事だよ」
「ちょっと待って、それは昔の話、今は聖教国は認めはしないけど、排斥はしないって考えじゃないかな?」
いつの間にか頭にミネアをのっけたラパンが話に加わる。
「それは表向きの話。聖教国の中心では裏では新しい教皇が実権を握って人心を掌握しつつ戦力を蓄えている。それが強力になる前に叩こうと思ってたんだ」
「お前は、世界に干渉したく無いんじゃないのか?」
「まあ、そうだね。この世界の事は住む人々で解決していくべきだと僕は思う。けど、それに人ならざる者が関わってくるなら話は別だ」
「人ならざる者?」
「神族、魔族、僕たち古竜。僕は聖教国に神竜王ゴルドランが関わってると思ったんだけど、正解は帝国だったんだね。ゴルドランは決めた事に一直線で人の話は聞かない。力づくで言う事聞かせるしかないんだ。まあ、僕たち古竜はだいたいみんなそうだけどね」
いつの間にか、みんな集まってオブの話に耳を傾けている。
「オブ君、それなら魔道都市としっかり話したらもっと違う方法もあったんじゃないかな?」
ラパンが尋ねる。今は、攻めてはないけど、オブのお陰で大変な目に1番あったのは魔道都市アウフだからな。
「時間、時間がなかったんだよ。現に神竜王は顕現している」
なんか、オブの言ってる事は幾つかおかしな所もある。コイツが知ってる事を全て話してる訳じゃないからだろう。特に聖教国を殲滅すると言った割には動機が弱い気がする。
「行く前に軽く食べない? 今日はサンドイッチよ」
まあ、僕はやれる事をやるだけだ。僕の考えはマイのサンドイッチを前に消え去った。やたら具材が豪華で美味そうだ。