中心部へ
「この森の下の迷宮は、『太古の監獄』とも簡単に『地獄』とも呼ばれている。神代の頃から存在し、森よりも迷宮の方が古いと言われている」
オブはいつもよく喋るけど、今は特に冗舌だ。僕たちは今、森の中の結界の中心部へと向かっている。下草は少なく木の幹があるだけで歩きやすい。けど、気を付けないと張り出した木の根に足を引っ掛けそうだ。辺りは薄暗く、僕たちの歩く音と、謎の鳥っぽい鳴き声がするだけだ。
「お前、なんかテンション高いけど、どうかしたのか?」
「そりゃあ、テンション上がるというもんだよ。このあと迷宮に行くんだろ」
「え、何言ってんだよ、そんな面倒くさいとこ行くわけねーだろ。お前はミネアとピオンとここで達者に暮らせ」
「私に任せろ。あの木の皮も食えるし、あのシダの芽も食える。あとは水場を探せば生きて行ける」
おお、珍しくピオンが冗談を言っている。
「なんと。せっかくこれからは美味しいものを沢山食べられると思ったのに、何ですかその貧しい食生活。せめて肉、美味しいお肉が食べたいです。むー、けど、今の僕では逆立ちしてもガーディアンには勝てないと思うし。また封印生活に逆戻りみたいな感じになっちゃうのですね。トホホホホホッ……」
おお、口でトホホって言う奴初めて見た。一気に言葉にリアリティ無くなるな。相変わらずドラゴンって死語のデパートだ。これも死語か。
「ええーっ、マジでアタシたち置いてくつもりなの?」
ミネアが飛んで来て僕の頭にしがみ付く。
「ねぇ、ザップ。アタシたちを置いて行くって嘘でしょ。嘘って言って」
うわ、あざと、コイツの猫なで声は鳥肌しかたたんわ。
「ミネア、頭使いなよ。まずは僕の古竜魔法『アダマックス』があるだろ。謎物質化して収納に入れたら簡単に出られるだろ」
ラパンが背伸びして僕の頭のミネアをポムポムする。なんか僕が撫でられてるみたいだな。
「あ、そうね、それに、アタシの『魔法なき世界』もあるしね。あれならこんなチンケな結界1発よね」
妖精は僕の頭を蹴って飛び始める。
「そうね。やっぱ『世界魔法』ってチートよね。絶対に効果が現れるって所がいいわよね」
マイが隣にやって来る。そうだよな。よく考えると幾つか脱出手段あるよな。それならさっき僕が結界と格闘してた時に助けて欲しかった。
「え、という事は、僕たちここから出られるのか? そうだよな、さすがにザップでも帰りの手段なく入ってくる訳ないもんな」
オブはそう言ってるけど、僕が脱出方法に気付いたのは結界に入ってからだ。
「それにしてもおかしいな? 結界の中にはある程度凶悪な魔物がいるはずなのに、1体も見ないな。ま、いっか。もうすぐ着くぞ。耳を押さえてた方がいいぞ」
オブが両耳を押さえて先頭に出る。そして少し歩くとオブの姿が消え去った。
久しぶりにエッセイ投稿しました。よろしかったら下のリンクからお願いします。また病院系ネタです。
題名は『逆流性食道炎というもので病院に行きました。これって生活習慣から引き起こされるみたいですね。皆様も気をつけて下さい』です。
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