結界
「この結界は、ここに生えてる全ての樹木と生き物から少しずつエネルギーを貰って、それを糧に生成されてるんだ。だからそうだね、何者といえども破る事はできないよ。この森全てを焼き尽くさない限りね」
オブはそう言うと腰に手を当ててドヤってる。
僕たちは空から結界の縁に沿うようにして地上に降りて、その結界の外にいる。上空の結界は不可視で柔らかく中に入ろうとすると優しくて押し戻されるような形だったけど、ここ地上部分はよく見ると薄いガラスのようなものがキラキラしている。ここら辺の森は遙か上の方は生い茂ってるが、ここは薄暗く、枝が落ちた太い木の幹が連なるだけで比較的歩き易そうだ。地上には木の根がうねり、苔やシダなどのあまり光を必要としない植物が生えてる。空気が澄んでいてヒンヤリしていて気持ちいい。
「僕はともかくとしてオブ君はここに入ったらどうやって出るつもりなの?」
ラパンがキラキラに手を突っ込んだり出したりしながら問う。
「あの、勝手に邪悪認定するの止めて貰えませんか? 僕、これでも古竜の一角で聖なる者側なんですけど。邪悪な者が出る方法は1つしか無いよ。中央から入れる地下迷宮をくぐるしか無い。まあ、ザップとかはここに入ったら、地下迷宮をくぐり抜けるしか無いだろうね。しかも地下迷宮の出口には今まで何者も通さなかった、森の力で無限再生するガーディアンがいる。だから、ザップとピオンさんとミネアはここに残って待ってた方がいいと思うよ。出られなくなるよ」
今まで何者も通さなかったガーディアン。ロマンの薫りがするが、時間がないからまた今度だな。
「オブ、お前こそ勝手に俺を邪悪認定するなよ。ピオンはともかく、俺は大丈夫なはずだ」
「こんな可憐な、アタシのどこが邪悪だっていうのよ! 神様へのお供え物を食べたり、賽銭をパクったりとかは今はしてないわ!」
やはり、妖精は邪悪だろう。けどちっちぇえ事してやがんな。体も小っさいだけに。
「そうだ。ピオンは邪悪、魔性の女」
どうもピオンは邪悪でもいいらしい。まぁ、元々暗殺者だしな。
「と言う事は、まとめるわよ」
影のリーダーのマイ様にここは判断して貰おう。
「この奥に妖精王がいる。そこに行くためにはこの中に入る。けど、結界に邪悪認定されたらここから出られなくなるかもしれないし、出るにしても時間がかかる。そうね、1番いいのは邪悪だと思われる人にはここでまってて貰う事よね。けど、索敵出来るピオンが居ないと逆に時間がかかるかも。みんなで中に入って、邪悪認定された人は帰りにここに置いて行って、あとで助けに来るって事でいいんじゃないかな? まあ、けど、ザップが摑まったらその地下迷宮に行くしかないわね」
と言うわけで、順番に結界を通れるか試してみる事にした。