迷いの森の中心
「ついたよ、これ以上下には降りれないみたいだ」
ラパンはそう言うと絨毯を横に移動し始めた。
まるで緑色の絨毯のような森の上を進み、かなり進んだ所で高度を落とし始めた。ちなみに絨毯の操縦はラパンが行っている。コントロールワンドと言う30センチくらいの棒に宝石みたいな石がついたものをラパンが握りしめている。僕が前に借りたヤツは念じるだけで自由自在に動く優れものだったが、コレはそれ以上スピードが出る分操縦は難しいらしい。
樹海、高度を落としていくと、辺りはまるで緑色の海みたいだった。けど、ある地点でそれ以上は下に行けなくなった。
「ミネア、起きて、どうなってるか解る?」
ラパンがミネアを揺すぶる。
「ん、ラパン、もうご飯なの?」
「寝ぼけてないで起きて」
「もう、しょうがないわね」
寝ぼけ眼でミネアは辺りを見渡す。
「うわ、ナニコレ。えげつないわね。こんな激しい結界初めて見たわ。ちょっと、オブ、アンタも起きなさいよ」
ミネアはオブをゲシゲシ蹴る。黒竜王、地に落ちすぎだろ。
「んー、もう飯なのか?」
「寝ぼけてないで、起きなさいよ」
さらにゲシゲシ蹴る。どうでもいいがコイツら飯の事しか頭に無いのか? 動物かよ。寝ぼけ眼でオブは辺りを見渡す。
「おお、凄い結界だな。さすが僕、素晴らしいな。けど、どんな結界で、なんで作ったのか忘れたけど。グー……」
身を起こしたオブはまた船を漕ぐ。立派な鼻提灯など作りながら。物語などで鼻提灯って聞いた事はあるが、フィクションだと思ってた。本当に存在するんだな鼻提灯。それはおいといて、コイツが作った結界なのか?
「おい、起きろオブ」
僕はオブの肩を掴んで乱暴に揺すぶる。
「んー、もう飯なのか?」
「それはもういい。どうやったら中に入れるんだ? それと、妖精王って奴はここにいるのか?」
「んー、間違いないよ、ここが妖精王がいる帰らずの森だよ。あと、普通に入ればどこからでも入れるよ。これは昔共同開発した防邪結界。ようするに邪悪な者を封じ込める結界だよ」
「これって、お椀型の結界の中央が盛り上がってるような型をしてるみたいね」
ミネアが目を細めてキョロキョロしている。
「そうだね。例えれば形がいい『おっぱい』のような型をしている。この中ではマイさんのような型だね」
オブが無邪気な顔で弾むように喋る。命知らずな奴だ。即座にその頭をマイがガシッと鷲掴みにする。
「オブ君、セクハラ発言止めようね」
「はい……」
マイに下品は禁止だ。あ、そう言えばお風呂の画像はどうなったんだろう?
「で、なんでそんな型なのか?」
「趣味だよ。みんな大好きな型だろ」
オブは無駄にドヤってる。ほう、高尚な趣味だな。こいつの頭にはメシとエロしかないのか?
「普通にって、どうやったらいいの?」
ラパンが尋ねる。
「下に降りたら、歩いて入れるよ。けど、この結界は普通の者は何もなく行き来出来るけど、邪悪な者は入ったら出られなくなるから気をつけてね」
僕たちはみんなお互いに値踏みするように見渡す。みんな、自分は邪悪じゃないから大丈夫だけど、コイツはどうなんだ的な考えなのだろう。僕の中での確定邪悪は、オブとミネアだな。