神話
僕たちは魔道都市に向かい、森へ向かうための道具などを買い、準備ができ次第、迷いの森に向かう事にした。まあ、いつものドラゴンあるあるで、オブが街に入るなり全裸になるというハプニングはあったが、順調に準備は進んでいると思われる。オブの服は結構しっかりしたものだったので、まさか魔法の服だとは思わなかった。やっぱりドラゴンには人間の常識ってやつをしっかり叩き込まないと。
今、僕は何をしているかと言うと、カフェのテラス席でコーヒーなど嗜んでいる。僕は冒険者ではあるが、前に所属していた『ゴールデン・ウィンド』というパーティーは、基本的にディッガーと呼ばれる迷宮探索をメインとしていた。ほぼほぼ迷宮探索しかしたことはないし、たまにフィールドに出たとしても、ひらけた所や、森の浅い所くらいしか探索した事は無かった。と言うわけで、森林探索をするのに何が必要かなんて全く解らない。それで、マイとピオンはお買い物に行っていて、ラパンとミネアは魔道士ギルドに資料集めに行っている。
それで、役立たずな僕とオブはコーヒーなど啜ってる訳だ。
退屈だ。
退屈だ。
「おい、オブ、お前なんか面白い話知らないか?」
「なんだよ、悪いが僕はそういうのは苦手なんだ。それに、長い間封印されてたおかげで、あんまり昔の事は覚えてないんだよ」
なんか古竜って物忘れひどいよな。ちなみにオブは今ブカブカなローブを羽織っている。丁度いいサイズが無くて、ラパンのお古だ。けど、その下は全裸だと思うと、何とも言えない。多分、マイ達がコイツの服は買ってきてくれると思う。
「けど、そうだね。覚えている範囲で昔の話でもするよ」
オブはそう言うと目を瞑り話し始めた。
「昔々、ある所にお爺さんとお婆さんがおったそうな。お爺さんは山に柴刈りに、お婆さんは川に洗濯に……」
「待てっ、オブ。誰が童話の昔話をしろと言った? 本当に面白く無い奴だな」
「冗談だよ、冗談」
「面白くねーよ、全く」
ボケるにしても、もっとエレガントにいって欲しいものだ。
「昔々、この世界では光の神々と闇の神々が終わる事無く戦い続けていた。双方の力は拮抗し、その戦いは終わる事が無かった。けど、ある時光の神々はその強大な自分の力を自分が作った武器に分け与えた。そしてその武器を核に太古の強力な生物を模した生き物を作った。それが僕たち古竜だと言われている。あくまでも聞いた話だから、どこまでが本当にかは解らないけどね。光の神々と僕たちは力を合わせ闇の神々を退ける事に成功した。けど、その後何があったかは覚えて無いけど、僕達は光の神々と敵対し、双方この世界から姿を消す事になった。僕たちは封印されて、神々はどうなったのか解らない。まあ、つまんない話だったかな?」
「いや、ためになる話だった。なんか意外にお前って凄いやつなんだな。まあ、俺の奢りだ。なんか好きなもの好きなだけ頼んで食べろよ」
なんか、なんて言うか、少しはオブに優しくしてやりたくなった。コイツはどれだけ長い時間封印されてたのだろうか? 少し可哀想になった。