戦神
「ドラ、ドラ、ドラ、ドラ、ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラッ、ドラッ!」
禿頭髭面、剥き出しの上半身に腰巻きだけのマッチョマンが殴る殴る殴る殴る殴る殴る。そして飛び上がって殴る殴る殴る殴る殴る。
大黒竜の殴られた所はまるで巨大な鉄球でもぶつかったかのように激しく凹む。
圧倒的だ。
圧倒的な破壊力だ。ただ物理的に力強く、ただ物理的に固い。そんな打撃が巨大な黒竜を見るも無残な姿に変えていく。
「ザップ様、そろそろ時間だ」
ようやく立っている黒竜に背を向け、ハンマーが僕の方に駆け寄る。以心伝心、やる事は解っている。僕も駆け出し、跳び上がる。それに合わせてハンマーも跳び上がる。丁度僕らが交差するところで、ザップ・ハンマーは、元の武器に戻る。それを両手で掴み叫ぶ。
「アダマックス!」
銀色に輝いていたハンマーはその光を失い、鈍色の塊と化す。対象の時間を止めて不毀にする古竜アダマックスの権能。大上段に振り上げ、狙うは竜の頭。全身の筋肉を使い、突進力、引力をそれに乗せてハンマーを振り下ろし、その鉄球に右手を添える。
ボゴムッ!
まるで何かが弾けるような音がして、竜の頭は爆ぜ散る。威力十分だ。そのまま勢いにのせてハンマーを振り抜く。残った竜の体を足場に後ろへ跳びクルリと回って着地する。目の前には首がひしゃげたドラゴン。けど、まだ動いている。さっきの過ちは犯さない。
ハンマーを収納にしまい、もう一つの僕の使い慣れた得物を出す。
「絶剣山殺し『山嵐』!」
僕は低く技の名を呟く。他には音を立てるものも無く、思いのほかよく響いた。
「ドォウリャーッ!」
巨大な竜の全長より遙かに長い、超大剣を薙ぐ、打ち付ける、払う、突き刺す、薙ぐ、薙ぐ、薙ぐ、薙ぐ!
しばらく後には竜だった肉片がぶちまけられてるだけになった。
「終わったな」
ブゥオオオン!
僕は山殺しを振るい血糊を落とす。そして収納にしまう。
「お前、前よりかなり強くなってないか……」
オブが僕に駆け寄ってくる。
「そりゃな。鍛え続けてるからな」
少しはオブに見直して貰えたかな?
「さすがね、ザップ。けど、やりすぎじゃ?」
マイも駆け寄ってくる。
「まあ、けど、ここの連中はしぶといからな」
僕も少し後悔した。せっかくだからドラゴンのお肉、から揚げにしたかった。残った肉片は、一応収納には入れるけど、血抜きできてないから多分臭いよな。
「よしっ、じゃあ、ここから出るわよっ」
何故か、いの一番に逃げて何もしなかったミネアが仕切って、僕たちは出口へと向かった。