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 先陣


「必殺古竜魔法『オブシワン』!」


 オブの女の子といわれても違和感がないよく通る高い声が響きわたる。オブを小脇に抱えたラパンがうっすらと黒いモヤに包まれている。


 あれが『古竜魔法オブシワン』か?


 音に聞こえし古竜魔法。発動すれば現れるのはその結果のみ。いかなる者も抵抗は出来ないという。ただ世界を変革する力をもった魔法を除いて。


「いくよっ! 焼き尽くせ! 『火炎地獄インフェルノ』!」


 前に少し出たラパンが右手を突き出す。その手からとめどない炎の濁流が現れ、大黒竜に向かって放たれる。それは大黒竜に当たるとその身を地獄の業火で包み込む。ムッとした熱気が辺りを包み込む。僕らは立ち止まり成り行きを見守る。


『グゥオオオオオオオオオオーン!』


 大黒竜がひとしきり叫び声を上げる。


「さすがだな。古竜魔法。凄い威力だな」


「ありがとう。もっと褒めていいよ。僕の権能は『魔法必中』。その力を使えば、誰でも必中の魔法を放つ事が出来る」


 オブのドヤ声がする。魔法必中、それは凄い。前にそれには悩まされた。古竜魔法アダマックスで何とか相殺したんだよな。


「ラパン、この距離で、あのデカブツに魔法、外す事あるのか?」


 抑揚の無いピオンの声がする。


「外す事はあり得ないね」


「魔法必中、役にたったか?」


「全く」


「黒竜にダメージを与えているのは?」


「僕の魔法『火炎地獄インフェルノ』だね」


「その役立たずの子供、解放しよう」


 ピオンはビシッとオブを指差す。


「そうだね」


 ラパンはオブを解放する。


「だから言ってたじゃないか! 僕は何も出来ないって」


 オブが僕に抗議する。負け犬の遠吠えだな。多分この炎でも大黒竜は倒せて無さそうだ。炎の中で動いてこちらに近づいて来ている。これからは物理の時間だ。オブは邪魔だな。


「下がれクズ」


 何て言おうか迷ってたら、ピオンがオブに止めを刺す。


「覚えてろよ! うわぁぁぁぁぁぁぁん」


 オブは泣きながら後ろへ走って行った。


「さてと、じゃあ、ぶっ叩くとするか」


 炎はほぼ消えて、黒竜がこちらを向く。鱗は所々剥げ落ち、背中にあった羽は骨だけになっている。


『ザップ様、ザップ力が溜まりましたぞ。まずは、俺に先陣をきらせて下さい』


 僕の頭に聞こえる低くてよく通ると言うよりすこしうるさい声。僕の愛用のハンマー『ザップ・ハンマー』の声だ。

 え、こいつってマッスルポーズを見せつけてくるだけの生き物じゃなくて、戦う事も出来るのか?


「行け、許可する」


「ザップ、誰と話してるの」


 即座にマイのツッコミ。説明しなくても見ればわかるかな。僕はとりあえずハンマーを軽く宙に放る。それは放物線を描きながらその頂点で七色の光を放ち、ハンマーがバッと膨れ上がる。それは巨大な人物になり丸まったまま前方宙返りをくりかえし、シュバッと地上に着地する。


「リアダブルバイセップス!」


 僕たちに背を向けて、両腕を曲げ力こぶを作り、発達した背中をみせつける。やっぱポージングはアリなのね……


「ザップ・ハンマー、参るっ!」


 誰も言葉を発せない中、ハンマーは巨竜に向かって駆け出した。


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