大黒竜
「おいおい、何だありゃ? いくらなんでもデカすぎだろ」
目の前のあり得ないモノを見て、ついつい、口にしてしまう。
あれから執拗な罠、やたら強くてしぶといゴブリンやオークを倒しながら、やっと迷宮の最後の部屋にたどり着いた。
「あ、多分、迷宮のエネルギー全部使われたな……。ああ、またコツコツ貯めないと……」
僕の横でオブがうなだれる。
「うん、こりゃ、何が何でも僕たちをここから生きて返さないつもりだな」
オブはブツを眺める。
「おい、お前、これやってるのお前の部下だろ。お前、そうとう嫌われてんな。何したんだ?」
「え、そりゃ、ただ薄給でこき使っていただけだけど。いつも僕の前ではニコニコしてたから問題ないと思ってたんだけどねー」
「そうか、全部お前のせいなのか。お前があれを何とかしろ」
「え、無理無理無理、だってあれ、完全体の僕より大っきいよ。多分僕より強いんじゃ?」
「お前、黒竜王だろ。それならアレは何なんだ?」
「うーん、大黒竜王?」
オブが首を傾げる。こいつにはプライドは無いのか?
「ザップ、冗談はここまでにして、アイツ倒さないと前には進めないんでしょ。作戦考えるわよ」
マイの言う通りだ。遊んでる暇はない。僕は目の前にそびえるソレをじっと見る。
部屋はかなりの大部屋。オブが言うには出口は部屋の奥にある。そして部屋の奥には巨大な黒色のドラゴン。見たところ神竜王よりデカい。
「ねぇ、アンタおかしいでしょ、何でアンタより強い奴がこんなしょっぼい迷宮にいるのよ!」
ミネアがオブに絡む。まあ言いたい事はわかるが。
「多分、アルファが僕のヘソクリの迷宮エネルギーを見つけたんだろうね。それで、普通の黒竜をありったけ強化したんだと思う。これでもうすっからかんだよ。僕は何も出来ないよ」
「ザップ、馬鹿正直に戦う必要は無い。引き返した方が安全」
ピオンが言う事はもっともだ。だけど、これはチャンスだ。
「ピオン、ザップの顔見てみなよ。顔に戦ってやるって書いてあるよ」
ラパンが僕に向かって親指を立てる。さすが僕と同化してただけあるよく分かってるな。
「俺の強化されたハンマーの威力を試すのには丁度よさそうだな。みんな援護を頼む。無理はするなよ。行くぞ!」
僕はハンマーを収納から出して、大黒竜に向かって駆け出す。
「ザップ、油断はなしよ」
「ああ」
マイが僕の横に並ぶ。ちらりと見ると、その手には巨大な斧、収納のポータルを2つ浮かべている。本気だな。
「援護する」
ピオンも僕の横に並ぶ。
「エンゲージ前に一発行くね」
ラパンも僕たちをの横に並ぶ。その脇にはオブを抱えている。
「あのぅ、僕は全くの役立たずだから
置いて行ってくれませんか?」
オブが情けない格好で情けない声を出す。まじで黒竜王なのか?
「オブ君、魔法得意なんでしょ、せっかくだからそれを見せて欲しいな」
ラパンは走りながら話す。ん、ラパンは呪文の詠唱しないのか?
「しょうが無いですね! 必殺古竜魔法『オブシワン』!」
オブの声がして見ると、ラパンが黒いモヤに包まれている。呪いなのか?