油断
「あれっ、おかしいな、アルファにここのコントロールは任せてるんだけど、魔物はカットするように言ったんだけど……」
オブのおかげで無駄な時間を過ごしたあと、僕たちは迷宮を先に進んだ。オブ言うには、戻るより進んだ方が早いと言う事で。
「アルファって誰だ?」
「僕の部下だよ。入り口で整理券配ってただろ」
そう言えばオブ以外にも子供が天幕の中にいたな。
「と言うわけで、ザップよろしく、見ての通り僕は子供で、基本的に頭脳労働担当だから」
都合いいときだけ子供になりやがって。それにしても頭脳労働担当の子供って何かおかしくないか?
オブは僕の後ろに下がり代わりにマイとピオンが前に出てくる。
僕たちの目の前にはフゴフゴ言ってる二足歩行の豚が3匹。オークだ。しかも、今までの事をかんがえると、べらぼうに強いオークなのではないだろうか。時間も無い事だし、いちいち戦ってやるつもりは無い。
「マイ、ピオン。下がれ」
僕は前に出る。
「剣の王」
ずがががががががががががががががががががががががががかっ!
射出したポータルから放たれる無数の剣。オーク3匹は吹っ飛ばされる。終わったな。
「俺の目の前に立った事を後悔しろ」
僕はクルッと振り返る。右手は額にあてた最近編み出した若干の憂いを含んだ格好いいポーズだ。フフッ、オブは空いた口が塞がってない。そりゃそうだろう。幾度ともない試行錯誤の結果、僕の剣を投げる技術はかなり向上した。コントロールは相変わらずだけど。その凄まじい威力に畏怖しているのだろう。
ん、オブの視線がおかしい。僕じゃなく僕の後ろを見ている。
「ザップ、何やってんのよ」
マイが怒号と共に僕に駆け寄る。ん、振り返ると、ブターッ!
「ホゲフッ!」
体から剣をしこたま生やした豚のパンチが僕の頭をはげしく揺すぶる。あぶねぇ、油断してたから首もってかれたかと思った。ガチで強すぎだろう。
「とうぇい! やあっ! はあっ!」
起き上がった僕が目にしたのは、マイのデスサイズが空を切りオーク3匹の首を刎ねたところだった。さっきを踏まえてか、飛んだ首を更に断つ。
「ザップ、さっきのゴブリンの生命力見たでしょ、ゴブリンよりオークの方が強いでしょ!」
マイは腰に手を当てて激オコだ。
「ごめんなさい」
こういう時は謝るに限る。
収納にばら撒いた剣をしまうが、まだ、オークの体は動いていた。やべーな、まじで油断しないようにしないと。
せっかくだから、次魔物がでたら、強化したハンマーの力を試してみよう。
「ザップ、急げよ」
オブが僕を急かす。いかんな次はガツンと実力を見せてやる。