伝説
マイのから揚げを美味しく食べて、オブがしこたま食べるのをみてゲッソリなったあと僕たちは移動する事にした。なんか見てるだけで胸焼けしそうな感じだ。
「そんなでっかいものが入るなんてどういう体してるんだよ」
収納にザップハウスを入れるのを見てオブがビックリしてる。けど、なんか言い方が変だな。奴の目がキラキラしてる。
「こんな大っきいモノを入れたり出したりしたら、お姉さんたちも大喜びだよね。女の人って大きいモノ大好きだからね」
子供らしい無邪気な高い声で、酔いどれのオッサンみたいな事言ってやがる。マイとラパンはキョトンとしてる。なに言ってんだろコイツは? てなかんじだ。それに反して、ピオンはちょび赤くなってそっぽを向いてて、ミネアはキラキラした目で僕たちを見ている。ここは助言しとくべきか? マイの前では下品は禁句だという、僕たちの間での暗黙のルールを。けど、もう1度くらい痛い目にあったがいいだろう。
「どうしたんだよ、オブ君、言ってる事の意味わかんないな?」
ラパンが口を開く。うん、まだ分からなくていいよ。
「うーん、君にはまだ早いかな? マイさんはザップが大きいモノを入れたり出したりしたら嬉しいでしょ?」
ゲッ、モロにピンポイントに1番ターゲットにしちゃいかん所を狙いやがった。血の雨降るぞ。
「うん、そうね。あたしは昔は貧しかったから、こんな大きなお家は嬉しいわね」
セーフ。マイはこういうのには鈍感だからな。ん、少しマイの顔が赤い気付いてないフリなのか?
「マイさんってネンネなのかなー? それともカマトトぶってるだけなのかな?」
オブが訳が分からん事を言う。なんだそりゃ?
「それって、どういう意味なの?」
マイが尋ねる。
「そっかー、今は伝わらない言葉なのか。『ネンネ』って、エッチな事を知らない事で、『カマトト』って知ってるけど、知らないフリしてる。ぶりっ子の事だよ。マイさんは多分『カマトト』だねっ!」
オブはウィンクして白い歯を光らせる。やっちまったなぁ。虎の尾を踏んじまった。僕はオブから距離を取る。巻き添えは御免だ。
「ピオン!」
マイが低い声で親指で首をカッ切る仕種をする。
「ラジャー!」
ピオンの姿がブレたかと思うや否や、
「おぶうっ!」
オブが地面に引き倒される。ピオンの影がそれに覆い被さり、グルンとお尻から後ろに回る。大地に背を付けたピオンの上には両足をピオンの両足で固められ、両手を両手で固定されブリッジしたみたいに仰向けになったオブの姿が……
「ロメロスペシャル……」
僕はその伝説の技の名前を口にする。格闘ショーとかでたまに披露される技で、かけ手とかけられる側の阿吽の呼吸がないと成功しないと言われている技だ。相手が子供とはいえ、まさか実戦でこれをかけられる者がいるとは……。当然ながらかなりの格闘に関する技術差がないと無理だ。
「マイ、やっちゃって」
「ありがとう、子供のお仕置きといえば……」
「キャハハハハハハッ。止めて。死ぬー。死ぬー」
マイのくすぐり攻撃に、ラパンとミネアも加わり、オブの哄笑はしばらく止まなかった。やべぇ、あれをやられたら、気を失う自信がある……
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