帰らずの森
「それで、その妖精王ってどこにいるんだ?」
妖精王っていうくらいだから、ミネアが何か知ってるかもしれないし、魔法についてはラパンも詳しいけど、まずは、知り合いっぽいからオブに聞いてみる。
「多分、帰らずの森にいると思うよ」
「帰らずの森」
つい、オウム返す。知らない名前だ。
「帰らずの森って誰か知ってるか?」
みんな首を横にふる。
「え、帰らずの森も知らないのか? 今の地形ではここからずっと北の方にある森だよ」
「それって迷いの森の事じゃない?」
ミネアが口を開く。さすが妖精、森については詳しい。
「ここから北っていったら迷いの森しか思いあたらないわ。アタシは行った事ないけど、奥の方に行ったらかえって来られないという誰も近づかない森よ」
「多分そこの事じゃないかな、時代がたって名前がかわってしまったんだね。なんか行くのは簡単で出るのが大変って言うのをおぼろげに覚えているけど、詳しい事は忘れちゃったよ。そういう森って他に無いでしょ?」
「あたしはここら辺を昔旅したけど、そういういわくのある森はそこしか知らないわ」
マイは以外と地理に詳しい。僕たちの中ではぴか一だ。
「じゃ、そこに行ってみようか。魔法が残ってるかは分からないけれど。それに場所が違ったとしても次探せばいいからね」
ん、オブもついてくる気なのか? 勘弁して欲しい。コイツは間違いなくトラブルメイカーだ。しかもこれ以上ドラゴンを抱えたら、家が食費で破産してしまう。
「え、お前、何言ってるんだ? お前を連れて行く気はないぞ」
「え、じゃあ、神代語を読める人はいるのかな? 多分魔道書はそれで書かれてるよ」
ラパンとミネアを見るが首を横にふる。
「と言うわけで、僕もついて行くよ」
「オブ、1つだけ聞かせてくれ。お前、飯どれくらい食べるのか?」
「ああ、そうだね。普通の人より少し沢山食べるくらいかな。それがどうしたの?」
「まあ、それならいいか」
なんか昔同じような話をした気がするが、気のせいだろう。
「オブ君はここから離れられるのかい?」
ラパンが尋ねる。そうだよな、他の古竜は迷宮に縛られてる事が多かった。
「ああね、僕は実体があるから大丈夫だよ。まあ、本体から離れすぎたら、色々能力に制約はできるけど」
「とりあえず、話はすんだ事だしご飯にしない?」
マイの提案で食事をする事になった。
「マイさん、最高ですね。こんな美味しいもの食べたの始めてです。こんなに綺麗で料理も上手なんて、将来きっといいお嫁さんになれますよ」
「ええ、いいお嫁さんなんて……。オブ君どんどん食べてね」
マイが顔を少し赤くしながらオブの前にから揚げの山を積む。そしてそれが無くなる。オブ、お世辞を言う。山ができる。無くなる。やっぱりそうなるのか。デジャブだな……