小黒竜
「ザップ、僕はね、君と深い穴に落ちていく時に、尻尾の先っちょを切り落として、地面の中に埋めたんだよ」
浅黒の目つきが悪い赤フン少年はドヤ顔で語り始める。お風呂の中でワカメのようにふんどしの先が揺蕩っている。なんか黒竜王オブシワンってクールで無口なイメージだったが、こいつは正反対だ。よく喋るし、なんか抜けてるし、正直ウザイ。
それから、コイツはうんざりするほど話し始めた。長くなりそうなので、途中で一旦風呂から上がり、リビングに移動した。そして、飲み物など飲みながら、話に耳を傾けた。
オブの話はすぐ脱線するし、ダラダラしてたので、要約するとこう言う事だった。
地面に尻尾を隠した。ほとぼりが冷めてから這いだして人型になった。本体からあまり近すぎると、ばれて邪魔されそうだから、斜めに掘る感じでダンジョンを作った。効率よく力を集めるために、冒険者訓練場と銘打って、難易度を低めにして、沢山の冒険者やその予備軍に利用して貰う事に成功して今に至るそうだ。
「あ、あのですね、ちゃんとクリアしたら最後には大金貨1枚相当のお宝が有るんですよ。だから、最終的にはチャレンジャーが儲かるように出来てます」
「それって、上手く言えないけど、あなたが損してるんじゃないの?」
マイの言葉にオブはチッチッと指を振る。
「それがそうでも無いのですよ。迷宮で冒険者たちが活動する事で、僕の迷宮には力が流れ込んでいきます。その力を使って迷宮では魔物を召喚したり、宝箱を作ったりとか活動してるんですが、配置してる魔物召喚陣も宝箱召喚陣も最低なものなので、ほぼコストは使いません。だいたい4人組パーティーの冒険者が半日活動したときに手に入る半分位の力を使ったら僕は大金貨1枚相当のアイテムを生み出せるのですよ。あ、マイさん、このジュースお替わり貰っていいですか? やっばいですね、ここの飲み物めっちゃ美味しいです。しかもお綺麗なマイさんからいただいたら、更に美味しいです」
「もうっ、お綺麗だなんて……」
マイは少し赤くなると、頬に手を当ててジュースを取りにいく。こいつ世渡り上手だな。いつの間にかメッチャ馴染んでいる。
「という事は、オマエ、変身したら尻尾になるのか?」
ピオンがオブをまじまじ見る。尻尾になるのを見たいのか?
「そんな訳ないじゃないですか」
オブは立ちあがるとポムッと煙を出す。煙が晴れたらそこには、小っちゃい黒竜がふよふよ浮かんでいる。中型犬くらいの大きさで、なんかずんぐりむっくりしている。あざといな。
「オマエ、可愛いな」
音も無くピオンが黒竜を抱き締めている。
「きゃーっ、ナニコレ」
マイも参加する。
「僕もだっこしたい」
「アタシにも抱かせなさいよ!」
ラパンと人間ミネアも参戦する。再びオブは女子たちに揉みくちゃにされている。今度はガチ羨ましい。
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