連携
「フシュー」
よく見ると、ゴブリンの胸の所にぽっかりと穴が空いて血がとめどなく流れている。そこから空気が漏れるような音がしている。肺に穴が空いてるのか。瀕死なのになんて力だ。
ハンマーを引いてゴブリンの体勢を崩し蹴り上げると、ハンマーを振り上げ下ろし、その頭を叩き潰す。
脇を抜ける影、いかん、四つん這いの奴だ。振り向くとピオンが手にした槍でゴブリンを突き刺し、ラパンがその頭をハンマーで叩き潰した。結構素早かったが、それよりピオンの方が機敏だ。マイの方を見ると、ちょうどゴブリンの首を刎ねた所だった。そして、斧を振るい血を落とす。
「飛行」
聞いた事の無いくぐもった声がする。誰だ? 声の方を見ると、ゴブリンの頭が血をしたたらせながら浮き上がり、マイの方に飛んでいく。
「ヒイッ!」
マイが悲鳴を上げる。僕は地を蹴り加速し、マイに届く寸前にゴブリンの首を全力で蹴り飛ばす。
ビシャッ!
ゴブリンの頭は天井に張り付き、血が撒き散らされる。それが僕とマイに降り注ぐ。
「あ、ありがとう、ザップ……」
マイはその場にへたり込む。
「きゃー。聞きました? 聞きました? マイが『ヒイッ!』って言いました。マイの可愛らしい悲鳴いただきましたっ!」
妖精がハイテンションで飛んでくる。うぜーな。確かにマイが悲鳴を上げるのを聞いたのは久々な気がする。ちょっと可愛かったな。
「黙れ!」
音もなく現れたピオンがミネアにデコピンを放っている。
「いったーい。なにすんのよピオン。せっかくアタシが場を和ませようと全力で頑張ってるのにっ!」
「ミネア、煽っても和まないからね。まあ、僕でも生首とんできたら怯むよ」
ラパンは槍を拭うと収納にしまう。最近冒険者やってるだけあって、頼もしいな。
「まさか、ゴブリンが『飛行』の魔法使うなんて、もし彼らが弱ってなかったら結構やばかったかも。これからゴブリンと戦う時には首刎ねた後にちゃんと潰さないとね」
マイは立ち上がるとお尻をパンパンする。びっくりしただけで、ショックは受けてないみたいだけど、普通のゴブリンはそこまでしなくてもいいと思うぞ。
けど、よろしくないな、結構みんな返り血を浴びている。ここ狭かったからしょうがないが。
さすがにもう敵はいないと思うけど、罠があるかもしれないので、ピオンに警戒して貰いながら、瓦礫を収納にしまっていく。結構広い部屋で罠は無く、奥には扉があった。いつの間にかさっきより大きい宝箱が出現していたが僕らは顔を見合わせて問答無用で収納にしまった。多分ロクなもんじゃない。宝箱というより大量破壊兵器だろう。魔道都市にもってかえって解析して貰おう。
「ねぇ、ザップ、少し休憩しない?」
マイはあらかた血を拭き取ってはいるが、それでも髪や服には残っている。
「そうだな」
広さ的には問題ないので、僕は収納からザップハウスを出す事にした。
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