スライム
「ザップ、この先の部屋に多分魔物がいる」
忍者ピオンは音もなく腰に下げた反り身の小剣を抜く。なんか格好いいな。鞘に油でも塗ってあるのだろうか? まあ、けど、僕には収納があるから関係ないが。あれっ、確かピオンも僕の収納の管理者のはずだけど。という事はただの雰囲気作りか?
「俺の出番だな」
前に出ようとする僕をピオンが押し止める。
「罠があるかも。ザップはついてきて。私は前衛もできる忍者。出来る女」
腰を落として前に進むピオンの後ろに僕はつく。一応、ハンマーは出しておく。さっきの事件でミネアはやる気を無くして、妖精に戻り僕の頭にしがみついている。次また臭いとかほざいたら、問答無用で振り落とす予定だ。
「あれってスライムだよね?」
僕の後ろからラパンの声がする。うん、確かにスライムだ。まあ、そりゃ初心者向けのダンジョンだから、定番ではあるわな。ピオンは立ち止まり、僕たちはスライムを観察する。うん、スライム、青色の一般的なブルースライムだ。けど、なんか嫌な予感がする。なんて言うか見た目が可愛らしくない。普通の奴はなんて言うかプルプルしててお饅頭のような型をしているのだが、目の前の奴は真ん中が盛り上がった円錐形の先が丸まったようなシャープな姿をしている。しかもプルプルしたりせず、じっと動かない。スライムだよな?
目の前のスライムの姿がぶれる。いかん、ピオンは反応出来てない。咄嗟にピオンの背中を引いて前に出る。瞬間、腹に焼け付くような痛み。スライムから伸びた体の一部が槍のようになって僕を貫いている。やるしかないな。巻き込まないように頭の妖精を掴んで後ろに投げる。
「「「ザップ!」」」
仲間たちの叫び声が聞こえる。
「大丈夫だ!」
大丈夫では無いが、コイツはヤバい。僕が倒す!
腹部に刺さったやつを無理矢理手で払って引き抜きエリクサーで癒しつつ前に出る。スライムからなんか飛んでくる。液体? かわそうにも後ろにはピオン。避けると彼女がくらう。両腕で顔を庇って前に出る。その液体がかかった所が燃えるように熱い。収納から剣の王を1本放つ。よし、やつは飛んでかわした。僕はその着地点をみこして、ハンマーを引き絞り、着地すれすれの奴を思いっきり打ち払う。
ビシャッ!
水が落ちるような音を立ててスライムは破裂した。
僕は液体を浴びた箇所をみる。うえ、見事に溶けている。急いでエリクサーをかけて治療する。
「ザップ、大丈夫?」
マイを先頭にみんな駆け寄ってくる。
「なんだ、あいつ、マジスライムなのか?」
僕の言葉にみんな顔を見合わせる。みんなアレがスライムだという確証をもてないのだろう。
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