魔道都市へ向かう
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「なに、ザップあんたしけた面してんのよ」
さっきからやたら妖精ミネアが絡んでくる。正直ウザイ。
「せっかくアタシがついてきてんだから、はしゃげとは言わないけど、もっと楽しそうにしなさいよ」
僕の回りをブンブン飛び回っている。ハエにたかられてるみたいで不愉快この上ない。
「あー、うぜぇ、しけた面もなんも、元々の顔だ。文句があるなら、ジブルたちの方に行けよ!」
「やーよ、なんでアタシが好き好んで神竜王なんて化け物んとこに行かないといけないのよ。そんなヒマあったら、うちでゴロゴロしとくわ」
ミネアは飛び疲れたのか、僕の頭の上に着地する。
「うわ、くっさ、男くっさ」
「臭いなら、どきやがれ」
頭の上を払うが、ヒョイと逃げられる。
「ザップ、良かった元気になったみたいで」
マイが隣でニコリと笑う。え、そんなに僕は元気なかったのか? 確かに黒竜王とは会いたくは無いが、吹っ切れたと思っていたのに。
「ザップ、遊んでないで、急ごうよ」
僕たちの前を歩いていたラパンが振り返る。妖精に気を取られて歩くのが遅れてたみたいだ。ラパンは今日はメイド服では無く、シャツに短パンというカジュアルな格好だ。まだ寒いと思うけど、これが若さかな。
「ああ、急ぐ。あふぅ!」
ラパンに返事した瞬間に、脇腹をつつかれて変な声が出てしまった。僕は脇腹は弱いんだ。
「ザップ、隙だらけ。実戦ならやられている」
振り返ると忍者ピオン。ピオンもメイド服ではなく、バリバリの忍者スタイルだ。殿を歩いていたけど、距離を詰められ奇襲された。やっぱ、最後尾は僕が歩こう。なにが悲しくて常にバックアタックを警戒せにゃならんのだ。
あのあと、1度『みみずくの横ばい亭』に向かって、メイド軍団と合流した。協議の末、2つのパーティーに別れる事にした。
僕、マイ、ラパン、妖精ミネアと忍者ピオンの黒竜王コンタクトパーティー。
アン、ジブル、元大神官シャリー、忍者パイの神竜王足止めパーティー。
僕たちの目的は、黒竜王に会って、神竜王についての情報を得る事。魔道都市に寄る予定なので、縁故のあるラパンかジブルのどっちかを連れてこうという事になった。ジブルが神竜王の様子を見たいという事で、ラパンについて来て貰う事にした。ダンジョンがあるという事で、斥候役にピオンも連れてく事にした。
ラパン達が僕たちが『太古の迷宮』に行ってる間に手に入れた情報は、帝国が国境近くの王国の都市を占拠したという事と、アンジュ達少女冒険者は王国軍と合流したという事だ。けど、アンジュ達とは未だ連絡が取れてない。スマホもメールも返信無しだ。
アンとジブルは、王国軍と合流して状況の確認と可能ならば神竜王の足止め、怪我人の治療やバフとデバフ要員としてシャリー、斥候兼サポーターとして、パイが同行する事になった。お店の方は猫耳のケイと新人アルバイトでどうにかするそうだ。
あと、連絡が取れないのが、魔王リナ達魔国メンバー。スマホで遠話したら、いつでもすぐに出るのに、おかしな事だ。嫌な予感がする。
もうすぐ、魔道都市に着く。魔王リナのワープポータルを使ったおかげで、そこまで時間はかかってない。
遠目に緑色の城壁が見えてきた。