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 筋肉


「モストマスキュラー!」


 目の前に現れた僕のハンマーの化身ザップ・ハンマーは身体を前に少し倒して、首周りや肩、腕の太さをアピールしている。


「ん、あいつ何て言ったんだ?」


「え、ザップ知らないの? ボディビルの型でモスト・マスキュラーよ」


 マイが意外そうな顔で僕を見ている。そんなの知るか。ていうか、なんでマイはそんなの知ってるのか? もしかしてマッスルが好きなのか? 僕は無意識のうちに、自分のたるんだ腹肉を掴んでいた。


 僕はハンマーを見る。禿頭にヒゲもじゃの顔、はち切れんばかりの筋肉に覆われた体に付けているのはボロボロの僕のに似た腰巻きだけ。確かに太ってるよりもガリガリよりもマッスルの方がマシだと思うが、あれはやり過ぎだ。正直個人的には気持ち悪い。夢に見そうだ。

 ハンマーは満面の笑みで、次は腕を真横にすると、上に垂直に肘を曲げ、握った手を内側に捻り、力こぶを出して行く。


「あれは、フロントダブルバイセップス。けど、レリーフの方が迫力あるわね」


 あ、アンもなのか? 何故そんなボディビルのポーズの名前なんか知ってるんだ?


「な、なにっそれならこれでどうだっ!」


 ハンマーは笑顔なのにそのこめかみには青筋が。レリーフよりしょぼいって言われたのがなにかにつけて火を付けたのだろう。

 ハンマーは横を向くと前の足を軽くくの字に曲げ、手を掴みこちらを向く。はちきれんばかりの大胸筋がよく分かるポーズだ。キモい。


「いいサイドチェストね。触ってもいいかしら」


 ジブルは駆け寄りハンマーの胸をペタペタしている。うっとりとしている。コイツの感性はどうでもいい。


「なんで、お前らそんなにボディビルに詳しいんだ?」


「別に詳しいもなにも、レリーフに会うたびに披露してくれるじゃない?」


 マイが答える。


「俺はそんなの見た事はないぞ?」


「ご主人様は、レリーフ見たらすぐ逃げるじゃないですか」


 そうだ、アンの言う通りだ。マッスルなんて見たくないから、レリーフとは格闘技講座以外ではあまり絡まないようにしてるもんな。あいつ、マイたちの前でそんな事してるのか。より絡みたくなくなった。


「はっ、見とれてしまってたわ。マイさん、時間無いわ、急いで肉焼いてマッスルにたべさせて!」


 アダが必死の形相でマイに詰め寄る。


「は、はいっ」


 マイは急いで焼き始める。


「もう、じれったいわね。生でもいいわ。どんどん食べさせて。マッスル来なさい!」


 何も解らないまま、マイがコンロに置いた肉をアダがハンマーにごいごい食べさせる。何だ? 何してるんだ? 何が悲しくて、僕はマッスルのポージングを、見せられた後に、マッスルがマッハで食べるのを見なきゃあかんのだ? 正直、なんか食傷気味だ。


「ターイム、オーバー!」


 低いイケボでそう言うと、ザップ・ハンマーは爽やかな笑顔を残し消え去った。後には、僕の愛用のハンマーが残った。


 何の儀式だったんだ? 何がなんだか訳が解んねーよ。


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