敗北
「ごちそうさまでした」
僕はむしった鶏肉みたいな肌になった、銀竜王アダマックスに手を合わせる。心の底から感謝する。こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか? あいつ、有難い事に体を覆う鱗を全部放ちやがったな。それを余すことなくすべてまるっと収納にいただいた。壊れる事無い無敵の戦輪を沢山いただいたようなものだ。これで神竜王ゴルドランへの攻撃手段が出来た。竜の鱗、投げてよし、売って良しの最高なものだ。自然とテンションが上がる。もうここには用は無いな。
「じゃあな、ありがとうよ」
僕は身を翻すと上へ向かう階段を目指す。
『待てっ。まだ決着はついてないわよ』
「ああ、そうか。決着か。当然お前の勝ちだ。さすが銀竜王強すぎる。俺には天地がひっくり返ってもたおせない。というわけで、また次もよろしくな」
僕は振り返って銀竜王に手を上げて挨拶して踵を返す。銀竜王アダマックス。なんて素晴らしい生き物なんだ。身を削って僕に無限のエリクサーを与えてくれて、いろんな魔物を呼んで僕を鍛えてくれる。あまつさえ、体を覆う大事な鱗を全てむしって神竜王を倒すための武器として献上してくれた。
家畜、家畜だな。家畜、例えば牛は美味しい肉だけではなく、その脂肪、皮、内臓に至るまで、全てのものが人間にとって役に立つ。僕たちはそう言う事を心にとめて家畜に対して感謝の気持ちを持つべきだろう。僕にとって銀竜王も同じだ。その存在にいつも感謝しないとな。こりゃあアイツに足を向けて眠れんな。
『え、何、私の勝ち? けど、なんか嬉しくないわ、え、ちょっと待って待ってーっ』
家畜が何か喋ってるが、僕は振り返らず上へ向かう階段に入る。
「あ、ザップおわったの?」
「ご主人様、お帰りなさい」
マイとアンは階段に座って仲良さそうにアンの前の主人のスケルトン4人組と喋っていた。特にアン、友達が出来てなによりだ。マイもアンデッド恐怖症も少しは克服出来ただろう。
「なんなら、お前達もついてくるか?」
僕はスケルトンに声をかける。
「そうしたいのはやまやまですが、銀竜王様の面倒みないといけないんで、ああ見えて寂しがり屋なんですよ、ご主人様は封印の影響でここから出られないですからね」
スケルトンのうちの1人はそう言うとカラカラ笑う。
『おねがーい。ちゃんと話するから戻ってきてーっ』
下からアダマックスの悲痛の叫び声がする。しつこいヤツだな。
「じゃあ行くか」
「「はい」」
僕たちは階段を上り始める。
『ねぇねぇーっ。今なら漏れなく、ゴルの弱点教えてあげるわよーっ』
ん、弱点? 神竜王ゴルドランの?
「ザップー、少しだけでも話きいてみない? なんか少し可哀相」
マイが僕の袖をクイクイする。
「しょうもない話かもしれんが、行ってやるか」
「ご主人様、お腹減ってきました」
そうだな、アンの言うとおりお腹も減ってきたな。