膠着
僕は灰色の塊になった銀竜王アダマックスと対峙している。どうしよう、どうすればいい? 僕の渾身の一撃でも傷1つつける事も出来ず、そういえば、かつて黒竜王オブシワンの必中の石化の呪いさえも竜魔法アダマックスは無効化した。正直、打つてが無い。何をしても成功する気がしない。
「…………」
ただ徒に時が流れてい行く。ん、僕は今何をしてるんだ? 戦ってるんだよな? 何故、アダマックスは何もしてこない。もしかして……
「もしかして、お前、動けないのか?」
『ギクリ!』
「なんだよ、その『ギクリ』って、『ギクリ』って口で言う奴はじめても見たな。お前、確かにその防御力は凄まじいよ。神竜王ゴルドランでも、黒竜王オブシワンでも手も足も出ないだろう。けど、お前、その間何も出来ないな? 負ける事は無いけど、勝てる事も無いだろう」
『舐めるな、ザップ・グッドフェロー。私は部分的に不毀化する事も出来る』
銀竜王の前足の先以外の全てが銀色の元の体に戻る。そして僕に向かってきて右前足を振り上げる。けど、遅い! 僕は簡単にそれを避けると、腹部を目いっぱいハンマーでかち上げてやる。
『ヒャウッ!』
銀竜王は痴漢にあった女子のような悲鳴を上げる。やりにくいな。気を取り直して横に滑り込み、ハンマーで前足をなぎ払い、バランスを崩して降りてきた頭部をハンマーでぶん殴ってやる。
『キャアーーッ! 痛いわっ!』
甲高い声で、銀竜王は悲鳴を上げる。銀竜王が横転したのをかわしつつ跳び上がり回転してハンマーを叩きつける。だが感触が変だ。また魔法アダマックスだ。横転したまま灰色の塊になっている。無様極まりないな。
「おい、銀竜王、魔法を解いたら解けた場所を殴る。もう止めにしないか? なんか女の子虐めているみたいで気分悪いんだよ」
『しょうがないわね。たかだか人間に本気は出したくは無かったけど、貴方が強すぎるのが悪いのよ。手加減出来ないから死んだらごめんなさいね』
銀竜王の体から今まで感じた事の無い圧力を感じる。一瞬、体が震える。何をする気だ?
『さようなら、ザップ・グッドフェロー。いくわよ、銀竜王アダマックス必殺の【アンブレイカブル・バレット】』
アダマックスの体が眩く銀色に光る。魔法が苦手な僕でもこれは強力な魔力だと解る。
咄嗟に収納のポータルをあらん限り展開する。
更にアダマックスは光を放ったと思ったら、僕に向かって無数の銀色の塊が飛来し途中からそれは灰色に変わる。
あれはヤバい。銀竜王の魔力を纏った鱗が古竜魔法アダマックスで、壊れない物質になって勢いよく僕に向かってくる。その数は半端なく、逃げられる隙間も無い。僕はその濁流に呑み込まれた。