第七十二話 荷物持ち脱出する
部屋を出ると通路で灯りがなく、壁に吊してあったランタンを手にする。見ると通路を挟んで同じ様な小部屋が無数にある。牢屋か?
片方ずつのぞき込む方法で全ての小部屋を見たが誰もいない。
道の両方の突き当たりはまた道で、等間隔に脇道があり、また、その脇道を小部屋が挟んでいる。
要は僕がいた小部屋のまわりと同じ造りのものがあと何セットかあった。全ての部屋を確認したが、誰もいなかった。ここは何だったのだろう?
牢だとは思うが使われた形跡も無ければ、見張りもいない。考えても答えがでないので、前に進む。隅に上り階段があり、それを上る。
次のフロアはどうも雑居房みたいで、大きめな部屋が下の階みたいに並んでいた。ここも調べるが誰もいない。下り階段の隣に上り階段があり、その横に兵士の詰め所があるが誰もいない。けど、誰かがさっきまでいたような生活感がある。
訝しげに思いながら階段を上る。上った先には長い通路があり、隣には兵士の詰め所みたいなのがあるが、ここも空だ。ここは壁に等間隔に灯りがある。通路の突き当たりは階段でそこに音をたてて人影が現れた。こちらに向かって走ってくる。
「ザップー!」
マイだ。よかった無事だったんだな。思わず視界がにじむ。マイは僕の方に駆け寄り飛び込んでくる。僕はランタンを落としマイを受け止める。
「ザップ、心配したんだよ、また置いていかれたかと思った……」
マイは涙を浮かべ僕にしがみついてくる。今だけは少しはいいか。僕も強く抱きしめてやる。
「大丈夫だ、無事でよかった」
ずっとこうしていたい所だが、やらないといけないことがある!
「心配かけたな、とりあえずここを出るか」
「うん」
階段を上りながら聞く。
「どうやってここがわかった?」
「会う人会う人に聞いてみたの」
「よく教えてもらえたな」
「んー、軽く、たっ叩いたら、快く教えてくれたわ…」
なんかたどたどしい、要は軽い拷問か?
階段を上るとそこは通路で、蹴破られたと思われる分厚い鉄の扉が三重にある。
「マイがやったのか?」
一応確認する。
「へへっ、急いでたから」
笑って誤魔化してるが、冗談じゃない。マイは怒らせないようにしよう。へこんでるぞ扉……
また無人の詰め所つきの通路から扉をくぐると、やっと外に出た。そういえば……
「そういえば、アンは?」
僕の問いに、マイは僕の後ろを指さす。
嫌な予感がする。けど、確認しないと……
そこは中庭で、大勢の兵士に囲まれた巨大な竜が……
「ウゲッ!」
たまらず、変な声が口から漏れた。