茶会
「うわっ、何これ、泥水? ペエッ、ペエッ。苦い、苦すぎるわ!」
銀竜王アダマックスはその美顔を顰ませて、地面にコーヒーを吐き出している。品がねーやつだな。さすがアンの知り合いだ。
僕たちは今、コーヒーを飲んでいる。さすがに地べたはあんまりなので、収納から机と椅子を出した。さっきのスケルトンたちは仕事に戻っている。
「ご主人様、そこの土いただいてもよろしいでしょうか?」
スケルトンの一体が猛ダッシュでやって来てアダマックスがコーヒーを吐いた土を指差す。こいつは変態なのか? かなり高レベルの。
「いいでしょう。好きにしなさい」
え、許可するの?
「ありがたき幸せ」
スケルトンは大仰に頭を下げると、どっからか出した袋にまるで宝物を触るかのように、丁寧に丁寧に入れていく。
「きったねー奴だな。なんなら俺が吐いたコーヒーもいるか?」
「そんなもん、いるか馬鹿。お前にはこれの貴重さが解らんのか?」
スケルトンがムキになって答えるけど、骨なので表情は解らない。
「そんなん解ってたまるか! 変態がっ」
「何言ってる? お前だって散々口にしてきてるぞ」
「え、何言ってやがる」
「無知極まりないな。先程の土は賢者の石の原料になる。この迷宮で産出される、金銀のポーション、エリクサーに至るまで全ての高位ポーションにはご主人様の体液が含まれてるんだぞ!」
「「ぶぶっ!」」
マイとアンが同時にコーヒーを噴き出す。なんとか横を向いてアダマックスにぶっかけるのは阻止出来たみたいだ。
体液? と言う事はゴールデンポーションはもしかして、アダマックスの……
「体液なんて言ったら、なんか下品じゃないの」
アダマックスがブウッと頬を膨らませる。止めなさい、そういう仕種していいお歳では無いですよ。
「地中深く封印されている、私の本体に槍が刺さった傷口から流れ出てる血液を使って、エリクサーとか作ってるだけよ」
ひょんな所で、なんで無尽蔵にエリクサーが湧く泉があるかの謎は解けたけど、なんか気持ち悪いし、少し可哀想だ。血液ってのは引くけど、血液でまだ良かった。違う液体なら金輪際エリクサーや金銀ポーションを口にする事がはばかられる所だった。
「なんか、お前も大変なんだな、まあ、飲めよ。砂糖とミルク沢山入れたら美味しいぞ」
僕は収納から、砂糖とミルクを出してアダマックスの前に置く。
「本当なの?」
おいおい入れすぎだろってくらいぶっ込んでるよ。
「うわ、美味いこれ、始めからこうやって欲しかったわ」
こいつはおこちゃま舌だな。かく言う僕もブラックは一口だけで、あとはミルクと砂糖マシマシだけど。
脱線したけど、さて、本題に移るか。
「頼む、銀竜王アダマックス、神竜王ゴルドランについて教えてくれないか?」
僕は単刀直入に切り出した。