銀竜王
大部屋の先の通路を進み扉をくぐって小部屋に入る。
部屋の中は剥き出しの土で、奥には土が盛り上がった所がある。アンの前のご主人様のお墓だ。そこには豪華な剣が刺さっている。その剣は前のアンのご主人様の剣で、抜くと呻き声を上げるという迷惑アイテムだ。それを抜くと、地下50層への階段が盛り土がスライドして現れるが今回はその必要がない。部屋の中央に下へと降りる階段が出来ているからだ。
僕たちは軽くアンの前のご主人様に手を合わせる。マイが花を手向けている。ここの分も用意してたのか。
そして僕たちは、新しく出来ている階段を地下へと進む。
ガキーン、ガキーン。
つるはしで壁を削る音が響く渡る。
「ご主人様のためなら、えーんやこーら♪ もう一つおまけに、えーんやこーら♪」
「「「えーんやこーら♪」」」
壁がゴツゴツした大きな部屋の中で、4体のスケルトンが楽しそうに歌いながら、つるはしで壁を掘っている。
「もしかして、ここの迷宮って魔法とかで作ったんじゃなく、完全手作りなの?」
マイが僕に小声で話しかける。
「そうみたいだな。どれくらいの年月がかかったのだろう」
僕も小声だ。なんていうか、一生懸命働いてる人って邪魔し辛いよな。
「あっ、もしかして、前のご主人様じゃないですか?」
アンにはそう言うデリカシーは無い。むしろ大声だ。
「おっ、アイローンボーじゃないか? 元気にしとったか? 一端休憩にするか」
「「「おう」」」
スケルトンたちは作業を止めるとこっちにやって来た。まじで、アンの前の主人なのか? どうして解った? スケルトン、つるはししか持ってないぞ。僕には、そこら辺のモンスターのスケルトンにしか見えなかった。
「前のご主人様、何してるんですか?」
アンが問いかける。僕たちは車座に地面にベタ座りしている。
「何ってそりゃ、工事だよ。俺達の墓の下は隠しルートにして、新しくメインルートを作ろうとしてたんだが、岩盤に突き当たってな。しかもこいつは魔法が一切効かないから掘るしかないんだ」
という事はたまたまここだけ手掘りしてるのか。
と、それは置いといて、まだまだ色々モヤモヤする所はあるが、僕たちの目的はアダマックスに会いに来たんだった。
「なんか和んでる所すまんが、アダマックスにはどこに行ったら会えるんだ?」
「カラカラカラ。兄さん、つえぇのに鈍感だな後ろ見てみろよ」
「え、後ろ? ヒッ……」
「キャッ!」
マイが僕に抱きついてくる。マイはホラー系は超苦手だから止むなしだ。
僕の後ろにはしゃがんでこっちを見て微笑んでいる銀髪の美女、笑ってはいるが、一瞬まじでゴーストかと思った。全く気配がしなかった。けど、そう言うお茶目は止めて欲しいものである。まあ、マイに抱きつかれて悪い気はしないけど。
「遅いですよ、ザップさん。私に聞きたい事あるのですよね。答えるかは別として、話して下さい」
そう言うと、銀髪の美女、銀竜王アダマックスは車座に加わり僕たちの前にベタ座りした。人の事言えないが、輩みたいだな。