蛇娘
「せっかく楽しんでたのを邪魔しやがって」
僕は目の前の化け物を睨みつける。大きな竜のような体から生える8本の蛇の首。そのうちの1つにはトカゲ面の幼女の上半身がついている。どっからどう見ても化け物だ。ここで止め刺した方が世界のためなのではないか?
マイとアンの戦いも終わったみたいで2人とも椅子に座ってこっちを見ている。どうやって自分の偽者を倒したのか聞きたい所だけど、それよりも目の前の馬鹿にお仕置きする方が先だ。少し調子に乗りすぎだ。
「俺は女子に手を上げる趣味はないが、お前は化け物だ。その暴走しまくるクソ蛇ごと調教してやる」
「へえーっ、そんな事言っていいんですか? 私が今取り込んだのはドッペルゲンガーですよ、ザップの体に私の至高の頭脳。今からここに最強生物が顕現するわよ」
目の離れたトカゲ面のジブルが口の端を歪める。笑っている積もりかもしれないが気持ち悪いだけだ。
「ごたくはいい。かかってこい」
ジブル如きに武器は不要。
「いくわよ、分離! そして、変身っ!」
ジブルとヒドラが分離し、ジブルの小さな体を黒い霧が包み込む。正直なんなんだコイツは、なんかどんどん人外化しているな。
そして、目の前には黒い姿の僕自身が立っていた。
「凄い、凄すぎる。体に力が漲るわ」
「盛り上がってる所すまんが、俺の格好して女性っぽい話し方するの辞めてもらえませんか?」
勘弁して欲しい。くねくねしてそう言う言葉使いされると、僕がその手の人になったのを見てるみたいで、心が痛む。なんの罰ゲームだ……
「ごめんなさい。つい……。違う違う。ザップ、これからは私の時代よ! ぎゃふんと言わせて私の事をジブル様って呼ばせてやるわ!」
流石、中身はアラサー。言葉が古い。
僕の姿をしたジブルは僕のハンマーを構える。むぅ、我ながら、あんまり格好良くないな。なんとも言えない。悲しい気分になる。
「行くわよ!」
だから、女言葉止めれって……
ジブルは駆け出しハンマーを引き絞る
ドゴンッ!
やっぱりそうなるのか。ジブルは盛大に地面に顔から突っ込んで動かなくなる。軽く足払いしただけなのに。コイツはデル先生のブートキャンプ強制参加だな。戦闘技術がつたなすぎる。
「やっぱ、ジブルね」
マイがやって来る。
「力、コントロール出来てないですね」
アンもやって来る。
「じゃ、行くか……」
まあ、ジブルだからしばらくたったら復活するだろう。ピクピクしてるし。けど、自分の姿をしたものが、ピクピクしてるのを見るのは忍びなさ過ぎる。
僕たちは、部屋の奥の扉を開けて先に進んだ。