変身
「なに、これ、体から力がみなぎるわ! 来た、来たコレッ」
なんかジブルが悶えている。
「フフッ、私は新たな力を手に入れたようね。へーんしん!」
なんか言ってるが、まあ、時間無いからほたっとこう。
「マイ、アン、奥でアダマックスが待ってるらしい。行くぞ」
「「はーい」」
僕たちはなんかキーキー言ってるジブルを後目に元来た道を戻る。
「見てみて、また更に強くなったのよ」
「はいはい」
ジブルの頭から牛っぽい角が生えている。もしかして、さっきジブルのヒドラ頭がミノタウロス王を呑み込んでたので、また新たな変身形態を手に入れたのか?
「ねぇ、ザップ、これ、また剛力のポーションよ、誰か飲む?」
マイが黄金色のポーションを出す。さっきドロップしたスキルポーションか。
「え、また剛力か? もしかしたら、ミノタウロス王は剛力のポーションしか落とさないのかもしれないな。まぁ、ジブルにでも飲ませとくか? ジブルが出したものだし」
「うわ、ジブルが出したって。なんか嫌な表現ね。はい、ザップ持っててよ」
「嫌だよ気持ち悪い」
「解ったわ。はい、ジブル。美味しいわよ。キュッと飲んじゃって」
「ちょっとマイさん酷くないですか? そう言う言い方されて、私が美味しく飲めるメンタルの持ち主だと? それより、さっきからスルーされてますけど、このジブルミノタウロス形態の能力は剛力なんですよ。ザップ腕を出して下さい」
僕が立ち止まって手を出すと、ジブルはそれを両手で捻り上げようとするが、びくともしない。ジブルは顔を真っ赤にしている。まあ、前に比べたらなんぼか強くはなってそうだ。軽く振り払ってやるとジブルはたたらを踏む。
「え、まじですか? あんた化け物ですか?」
「はい、そうですよ、ご主人様は軽く化け物です。ジブル、大人しくあなたが呑んでから出した、その黄金色の聖なる液体を飲みなさい」
アンはそう言うと、マイからポーションを貰ってジブルに渡す。なんか、アンは本を読んで勉強すればするほど品が無くなっている気がする。多分、少女冒険者の魔法使いルルから借りてる本のせいだと思うが、どんな本を読んでる事やら……
「言い方……まあ、いただきますけど」
ジブルはポーションの栓を開けて、中の液体を飲み干す。見た目幼女なのに腰に手を当てておっさんみたいだ。残念な生き物だな。
「う、うまっ。みなぎる、更にみなぎるわっ!」
そんなこんなで、噴水の部屋を抜けて、昔アンと戦った部屋にさしかかった。なんか最近、スキルポーションを手に入れるたび、同じ様なことしてるような。高価で有難い薬なのでもっと大切にしないとな。