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 接戦


「ジブル、もっと手数を出して!」


「限界ですっ!」


 マイが叱責し、限界と言いつつも、ジブルの小刻みな打撃がミノタウロスを攻め続ける。

 エリクサーの部屋から通路をくぐって扉を開け大部屋に出ると、激しい金属を打ち付ける音が僕を出迎えた。大きい影と小さい影が着かず離れず激しく動いている。辺りには数頭のミノタウロスの骸。小さい影ジブルが相対しているのは普通のより一回り大きい個体。ミノタウロス王だ。


「あ、ご主人様、あまりにも遅いんで遊んでました」


 アンが僕の方に駆け寄ってくる。相変わらず脳天気だ。ミノタウロスに外傷が無い所からミノタウロスはアンが倒したのだろう。こいつは最近はステゴロを愛している。エルフの野伏レンジャーのデルの影響だ。


「無理無理、無理ですってーっ!」


 かん高い叫び声を上げながらジブルは王の力任せの一撃をハンマーで受けて後ずさる。すげぇな、互角に戦っている。


「私は魔道士、魔法使わせてもらいますっ! ウィンドカッター!」


 ジブルの突き出した手から、無数の風の刃が王に飛来する。王は持ってる斧の腹で顔面を庇う。目くらましか? そして、更にジブルは王から距離を取る。


「出でよ、蛇の王! 『蛇王召喚』!」


 ジブルの足下に小さな光輝く魔方陣。そこから足の生えた小さなぶっさいくな蛇が出てくる。奴の従魔(?)の蛇だ。臭い息を吐く迷惑生物だ。


「合身!」


 ジブルは胸の前で両手をクロスした香ばしいポーズをとる。多分無駄な演出だ。そして跳び上がり、現れた蛇も跳び上がり交差した瞬間にはドラゴンのような体から幾本も蛇の頭が生えた生き物が現れた。その頭の1本にはトカゲ顔になったジブルが生えている。導師ジブルの第2の変身形、ヒドラジブルだ。多分強い生き物だと思われるのだが、奴がコントロール出来ているのは、自分が生えた所だけで、他の蛇頭は全く奴の言う事を聞かない。ただの迷惑生物だ。


「牛ヤロー、第2ラウンドだ」


 ヒドラジブルがミノタウロス王に襲いかかる。けど、他の蛇頭はだらんと寝そべってる。戦う気なしだな。

 さっきまでの身長差は逆転し、ジブルが蛇の体をのたうたせながら、変幻自在な打撃を王に叩き込む。膂力も互角みたいだ。


「ばくん!」


 決着は一瞬だった。興味なさそうに戦いを見ていたヒドラジブルの蛇頭の1本が恐ろしいスピードでミノタウロス王を頭から丸呑みしてしまった。


「お前、何、食べてんだよ。吐き出せ。勝負の途中だろ!」


 ジブルが蛇頭に殴りかかるが、ヒョイとかわされる。しばらくその膨れた蛇の体がボコボコのたうってたが、すぐに動かなくなる。


「ジブル、何やってんのよ、ドロップ出なかったじゃないの」


 マイがヒドラジブルに駆け寄る。すると、多分ミノ王を呑み込んだ頭がマイに近づきベエッと口を開ける。舌が伸びて来てその先には瓶みたいなのが乗っている。


「これ、くれるの? ありがとう」


 マイは苦笑いしてそれを受け取る。ゴールデンポーションっぽいな。どうもヒドラジブルの蛇頭達はマイには懐いているみたいだ。餌付けされたのだろう。


「分離っ!」


 ジブルが叫ぶと、元のジブルとちっこい蛇に分かれる。なんか変身が上達してるな。ジブルの服はアンがよく着ている緑のワンピースだ。多分魔法の服だ。アンが得意な実体の無い服をつくる魔法、何気に僕以外みんな使えるな。


「マイさん、すみません。つい魔法使ってしまいました」


「しょうがないわね。まだまだ鍛錬しないとね」


 マイはジブルの肩をポンポンする。まあ、本人も言ってたが、魔法職なんで、ミノタウロス王とサシで戦えるだけで充分だと思うのだが。


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