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 ピット


「おい、待てよ!」


「キャアアアアアァァァァーッ」


 僕の静止虚しく3人は落とし穴に吸いこまれて行った。なんか最近よく耳にするマイの悲鳴を残して。

 間違いなくジブルの落下コントロールの魔法間に合って無かったな。けど、あの3人なら大丈夫だろう。下にエリクサーの泉あるし。

 けど、どうするか? まあ、時間短縮のために穴に飛び込むって選択肢は無しではないが、せめて僕も連れて行って欲しかった。

 僕は穴の縁から下をのぞき込む。黒々と闇が広がっている。うん、怖いな。飛び込むのは無しだ。けど、ここを通ったらかなりのショートカットになるし。僕は収納のポータルを空間固定して足場にしながら、ゆっくりと穴の中を降り始めた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「で、お前は何してるんだ?」


 僕のそばに、銀髪に角が生えた妙齢の美女が浮遊して僕の方をじっと見つめている。しかもなんか若干透けている。とっても美人さんなんだけど、正直幽霊みたいでキモい。コツコツと穴を降りていたら、急に目の前に現れた。ビビって足踏み外しそうになっちまった。


『何してるもなにも、あなたはわたくしに用事があるのではないですか?』


 珠を転がすような涼しげな声。


「もうちょっと、空気読めないかな? 俺は今、結構辛いんですけど」


『しょうがないじゃないですか。やっと追いつけたのですよ、顕現しても顕現しても逃げられて、わたくしの苦労を少しでも配慮して下さい』


 確かこいつの名前は古竜の銀竜王アダマックス。王と言う名なのに女性なのはどうかとは思うが、所詮ドラゴン。アンみたいに色々ユルいんだろう。彼女の言う事聞くからに、ずっと僕らとコンタクト取ろうとしてたのか? そういえばずっと猛ダッシュしてたな。それで振り切ってたのか。こいつに会うのが目的だったのに、ついつい久々の迷宮ではしゃいじまった。本末転倒だ。


「そっか、すまん、急ぎすぎてた訳か……」


『それで、やっとお話が出来ます』


「じゃあ、俺たちがここまで来た訳は解るよな?」


『はい、ゴルドランが復活したのですよね。わたくしも存じております。色々、ザップさんとは話したい事があります。けど、申し訳ございません。時間切れです。もう、エネルギー不足で……奥に分体を置いてますので、そこでお待ちしてます……』


 言うなりアダマックスはフッと消え去る。なんか訳分からないが、奥まで行けばいいのか。僕はまた穴の中を降り始める。ポータルから出る微かな光のみを頼りに。

 10階層近い深さの落とし穴だけあって、降りるのは思いの外時間がかかった。いっそのこと飛び降りよっかと何回か思ったけど、痛いのは嫌だから地道に進んだ。こういうのって、木登りみたいに、登るより降りる方が大変だ。


「おーい、誰かいないのか?」


 やっと噴水の部屋にたどり着いたのだけど、3人とも居ない。呼んでも返事が無い。ちなみにここは小部屋で、中央に噴水があり部屋を挟んで2つの扉がついている。なんとこの噴水から出ている液体はなんでも治癒する秘薬エリクサーで、いままで何度も僕を助けてくれた。ふと見ると、扉の1つに貼り紙がしてある。


『ジブルの修行に行ってきます』


 几帳面なマイの字だ。当然無事みたいだな。僕が遅すぎたのでどうも探索に行ってしまったらしいな。



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