無敵
「お、俺のハンマーが……」
僕は収納にハンマーを入れると、神竜王と距離を取る。物理が駄目でもやれるだけやるのみだ。僕は収納の中身を確認する。
まずは、アンのドラゴンブレスを数条、神竜王に放つ。やっぱり効いてないな。でもこれはただの目くらましだ。
そして次に収納から出すのは、収納系の最大攻撃『自家製メテオストライク』。巨岩を天空から落とす、収納に入れる、落とす、収納に入れるを幾度となく、炎を纏うまで繰り返した、努力の作品だ。
ドゴゴゴゴゴコゴーッ!
神竜王の上に燃え盛る巨岩が現れてその頭部に激突する。だが、その巨岩は砕け散る。頑丈すぎるだろ。
ドゴゴゴゴゴコゴーッ!
さらにもう一発。神竜王は爆炎に包まれているが全く効いてるようには見えない。化け物め。けど、これの目的は神竜王の足場を崩す事。ばれないように奴の地下には可能な限りの穴をポータルで掘った。神竜王は無傷でもその衝撃を削る事は出来ない。神竜王の下にぽっかりと穴があき、その身が吸いこまれていく。
「破壊の塔!!」
僕は必殺の技の名前を叫ぶ。適当につけたものだけど、名前を叫ぶと、気合が入る。収納から、以前手に入れた巨大な魔力を帯びた物質で出来た塔を出し、神竜王の上に顕現する。黒竜王を封印した技とほぼ同じ。収納から出現した頑丈な多分魔法で強化された巨大な塔は神竜王を押し潰す。
砂埃の中に現れる荒野に佇む、傾いだ巨大な塔。
終わったのか? 流石に頑強な神竜王でも動けなくなっただろう。
静寂が辺りを包み込む。
塔が小刻みに揺れ始めた。ま、まじか?
塔が更に傾ぎ、その根元から金色の爬虫類のような手が生えてくる。右手。そして左手。首が出てきたと思った次の瞬間には大地が爆ぜ、巨大な金色の竜が這いだしてくる。そして僕とドラゴンは睨み合う。考える。なにか手段は無いか?
『ザップ・グッドフェロー。残念だな。もう少しあと少しお前が強かったら、俺も危なかった。お前は危険過ぎる。俺の障害になる前に消えてもらう。もう加減は無しだ』
神竜王は僕の目の前でその大きな顎を開ける。その口の中で炎が渦巻く。くるか? ドラゴンブレス。
僕はブレスが来たら収納に仕舞うべくポータルを展開するが、それは杞憂だった。
『くっ、エネルギー切れか……』
「しょうがねーな。今回は引き分けという事にしておいてやるか!」
僕は三下の噛ませ犬みたいなセリフを残して、一目散にその場から逃げたした。
収納に空気をしまい抵抗を無くする全力の荷物持ち走りで飛ぶように駆ける。しばらく走り振り返る。奴は追っかけてこない。
少し、いや、かなり情けないが、僕にはもう打つ手がない。みんなと落ち合う予定の場所へと向かった。