第七十話 荷物持ち立ち向かう
「ザップ、今お前なんて言ったんだ?」
アレフがゆっくりと振り返る。その声は怒気をはらみ、思わず身が竦みそうになる。
さっきのマイの音でか、全身鎧の衛兵たちがやってきて、僕たちのまわりを取り囲む。他の者は遠巻きに成り行きを見ている。
「ゴミ袋の分際で、この俺様になんて言ったか聞いてんだよ!」
アレフは目を吊り上げ怒鳴り散らす。
その逆上してる様を目にしたおかげで、逆に僕は落ち着く事が出来た。
そうだこいつはクズだ、とうしようもなくわがままで自分の思い通りにいかない事は無いと思っている。
ここは王城、関係無いな。
ここでこいつをぶっ潰す!
「お前、耳が悪いのか、お前のようなクソヤローとは金輪際一緒に行かないって言ったんだよ!」
僕は一字一句はっきりと、この馬鹿に解るようにゆっくり伝えてやる。こいつはすぐに自分の都合よく曲解するからな。
「ほう、偉くなったなクソ虫が。死にたいようだな……」
アレフの顔に笑みが浮かぶ。口を開け歯を剥く。これは威嚇の笑みだ。獲物をみつけた猛獣だ。けど僕は数多の猛獣を命がけで屠ってきた。怖くは無い。
「アレフ、俺がこいつをしつけようか」
ダニーが拳を握り指を鳴らす。
「二度と生意気な事言えないように、腕一本焼きつくしましょうか?」
ポポロが禍々しい杖をかざす。
「神の御名の下に、こいつ、壊す?」
マリアが多分邪神に祈りを捧げる。
四人一緒は不味い、取り敢えず距離をとるか?
「まて、ザップは俺の獲物だ、黙って見とけよ」
アレフは腰に帯びた剣を音もなく抜いた。
こいつが馬鹿でよかった一対一ならやりようがある。
剣身が金色に光る。それがその時僕が見た最後の光景だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ウウッ!」
胸の所が痛む。その痛みで目が覚めた。
ここは何処だ?
何が起こった?
目を開けると薄暗い所にいた。かび臭い空気が鼻をつく。徐々に目が慣れて、石造りの小部屋にいる事が解る。向かい側に金属の扉が見える。
両手両足には鉄の枷がついていて、壁に頑丈そうな鎖で繋がれている。力を入れたら千切れるかもしれないが今は止めておく。
まずは現状確認からだ。痛む胸を見ると浅く袈裟懸けに斬られているのが解る。まだ、じんわりと血が出ているようだ。収納からエリクサーを出してかける。瞬時に治癒した。
多分、今いるのは城のどっかだろう。マイとアンは無事だろうか?
「誰かいないのか?」
まずは情報収集のため、大声を出してみた。
何のリアクションも無い。何の音もしない。誰も居ないな。それならここにいる意味は無い。
ここを出たら、やる事が多くて考える余裕がないかもしれない。頭の中で状況を整理する事にした。
新作始めました。すこしエッチです。よろしくお願いします。
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