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第七話 荷物持ち迷宮を進む


「はぁっ、はあっ……」


 部屋の中のヘルハウンドを焼き尽くし、僕は肩で息をつく。


 ヘルハウンドの群れは連携をとって襲いかかってきたので慌ててしまい、ブレスを加減なく放出してしまった。ほぼ全匹、消し炭のような状態だ。肉の焦げる臭いが気持ち悪い。焦げた死骸に囲まれて、ここは地獄なんじゃないかと思える程だ。


 最初に遭遇した一匹目だけが頭だけが燃え尽きていて状態がいいので、これを食する事にする。それにしても困った。何も切るものがない……

 収納からミノタウロスの斧を出して、かろうじて両手で抱え上げてヘルハウンドに突き立てる。

 それを何度か繰り返し、なんとかグズグズだけど肉片を手に入れた。血のしたたるそれの小さい欠片をつまんで口に放り込む。


 固くて臭い。


 しかも生だ。


 むせ返るような血の臭いが鼻腔に広がる。咄嗟に吐き出しそうになるが、我慢して噛み続ける。肉は酷く固く、いつ飲み込めばいいのかわからない。それを無理矢理喉に押し込む。クソ不味い。それでも僕は腹に何か入れられた事に満足し、しばらくそれをむさぼった。


 なんとか飢えをしのぎ、少しは考える余裕ができてきた。僕は地面に寝っ転がり、考えをまとめる。

 

 まずはこれからどうするのか?


 この調子で行けば、上手くいけば地上に戻れるかもしれないが、戻ったらどうなるのだろうか?


 あの凶悪な【ゴールデンウィンド】のメンバーが僕を見逃すとは思えない。間違いなく、次に出会ったらパーティーの名誉のために、虫ケラみたいに抹殺されるだろう。


 あいつらと戦うにしても、このドラゴンブレスの攻撃は初見殺しだ。見切られたら簡単に返り討ちにあうだろう。


 強くなろう!


 強くなるしかない!


 この迷宮を足がかりにして、あいつらを見返すほどに。


 幸い今の所、水と食料はある。


 この迷宮の全てのモンスターを狩りつくして、出来うる限り強くなってやる!


 あいつらが僕にしたことを、絶対に、絶対に後悔させてやる!



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 僕は今、落とし穴の前に立っている。


 僕が戦士ダニーに突き落とされた場所だ。


 悲しくも無いのになぜか涙が溢れる……



 帰ってきた!



 あれから何日経ったかは覚えていない。髪の毛と髭の伸び具合から、10日程ではないだろうか?

 緊張の連続で幾度と無く死にかけた。だが、この階層までの全てのモンスターを屠ってきた。アイツらへ仕返しする事だけを考えて。


 ヘルハウンドとの最初の遭遇以降、限りがあるドラゴンブレスには出来るだけ頼らずに、ふらつきながらもミノタウロスの武器を使って戦って来た。

 収納から武器を出し入れする事で上手く戦えるようにはなってきた。全てを踏破してきたのでここまでの道のりは全て頭に入っている。10回階段を登ったので僕が落ちたのは49層だった事がわかった。


 僕は手を握りしめる。追放された時の事を思い出す。


 やっと戻って来た!


 これからが始まりだ!


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