黄金竜
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「グゥオオオオオオオオーン!」
黄金竜は天に向かって叫ぶ。バリバリ威圧効果がのったヤツだ。空気が震え体がビリビリする。今まで聞いた咆哮の中で最上のものだ。だが、なんとか竦む事なく耐え抜いた。
気を引き締めハンマーを構え、相手を観察する。デカい。アンより、一回りいや、二回りは大きい。僕が今まで見たドラゴンの中で1番デカい。羽根は小さいが腕、足、首などいたる所が太い。体には細かい陰影があり、筋肉の隆起がよく分かる。コイツは間違いなく強そうだ。黒竜王オブシワン以上に見える。
今まで、なにか違和感を感じていた。何故皇帝がそんなに強気なのか。数人で敵地に乗り込んだり、強い毒が効かなかったり。その疑問が解けた。帝国最大の戦力は皇帝そのものだったんだ。どういう理屈で、皇帝はドラゴンの力を手に入れたのだろうか?
『人と人との戦争にこの体は使いたくは無かったのだが、しょうが無い。お前が強すぎるのが悪いのだ。ザップ・グッドフェロー、今の俺には貴様に勝ち目は無い。今ならまだ降伏を受け入れるぞ』
頭の中に直接声が響く。念話、魔法の一種だろうか? 冷静に考えてみる。僕はコイツを倒せるのか? いや倒せる倒せないじゃない。平穏な日々を守るため、王国にコイツを向かわせる訳には行かない。ここで食い止める!
「生憎だが、その気は無い。お前こそ、今なら降伏を受け入れるぞ!」
相手の力は未知数。だが今までの皇帝の言動を鑑みると、いきなり問答無用で全力では来ないだろう。
相手はデカブツだ。僕の得意な力押しの攻撃にはいい的だ。ブレス対策に収納のポータルを回りに浮かべる。コマンドはブレスを収納しろだ。
『そうか、ならば、貴様を倒すしか無いな』
「そう簡単に倒されると思うなよ。『剣の王』!」
まずは小手調べ。出しうる全てのポータルを射出し、そこから飛剣を出す。
ズガガガガガガガガガッ!
収納のポータルから放たれた無数の剣は一直線に黄金竜に向かう。全てヒットするが黄金竜は微動だにしない。思った通り全く効いて無さそうだ。けど、これは目くらまし。瞬時に竜の右に回り、一回転の勢いをつけ、ハンマーを前足に向けて振るう。
ゴゴッ!
ハンマーを持つ手にしびれが走る。なんて硬いんだ。しかも、全力で叩き込んだのに、その足は微塵も動かない。
『何をしてるのだ? ザップ、お前はそんなものか? お前の得意な攻撃を好きなだけ放て』
くそっ、舐められたもんだな。
「余裕だな。吠え面かくなよ! 望み通り全力で行ってやる!」
僕は一旦ハンマーを収納にしまい、昔勇者アレフから奪った『勇者の剣』を収納から出して構える。この剣には斬りたいものを斬るという能力がある。黄金竜に通じるだろうか?