バレンタインSS
今年もバレンタインデーがやって来た。確か去年はチョコレートを食べ過ぎて、ほぼほぼ吐いてしまうという悲しい結末に終わったのを思い出す。
多分今年もたくさん貰うと思うから、貰ったら目の前で少しだけ食べて、後は残しておいて少しづつ食べようと思う。流石に同じ過ちは二度と犯さないのだよ。
僕はうずうずしながらリビングで本など読んでいる。近くのソファには幼女導師ジブルも読書してるのだが、なかなかチョコレートを渡して来ない。もしかして知らないのか?
「おい、ジブル、バレンタインデーって知ってるか?」
「知ってるわよ。え、もしかしてザップチョコレート欲しいの? 何言ってるのよ? バレンタインデーって商人がチョコを売るために立ち上げたイベントでしょ。そんなのに振り回されるのってなんか馬鹿みたいじゃない。もっと大人になりなさいよ」
うっ、幼女に大人になれって言われてもうた。少しイラッとする。
「ロマンの無いヤツだな。それだからいつまでたっても彼氏出来ないんだぞ」
「余計な御世話よ」
ジブルは本から視線を離さない。いつもはもっとむきになるのにつまらんな。
僕は場所を変えてアンの部屋に向かう。
「ご主人様、最近は逆に男性から女性にあげるのもありらしいですよ。と言うわけで私にチョコレートください」
アンもどうやらチョコレートはくれないみたいだ。まあ、はなからコイツには期待してはいなかったが。
あと、部屋の炬燵には、少女冒険者4人のうちの1人巨乳魔法使いのルルもいる。
「私たちは今年はザップさんにはチョコはあげない事にしました。マイ姉様が怖いですからね」
え、ルルたちもくれないの? なんか少しづつ悲しくなってきた。
僕はすごすごと部屋を出る。キッチンに行くとマイがいた。
「今年はザップにはチョコレートはあげないわ。だってホワイトデーになにも返して貰ってないし」
マイは僕の方を振り返らずに言う。あ、そうだったマイの言う通りだ。だけど、去年のホワイトデーは僕はラパンになってて、マイ達は石になってたからどうしようも無かったと思うのだけど……
僕はいたたまれなくなって家を出る。ま、まさかマイからも貰えないとは……
ああ、誰かチョコレートくれないかな……
隣のお店『みみずくの横ばい亭』に行ってみる。ここでも誰もチョコレートをくれない。忍者1号2号、猫耳のケイ、神官シャリー、妖精ミネア、それにラパンさえもだ……
吐くまで沢山チョコレートを食べた、去年とは大違いだ。なんて言うか勘違いしていただけで、実際は僕は女の子たちに嫌われているんじゃないだろうか? 日々の自分の言動を振り返る。心当たりがおおすごる。気もそぞろに家に帰り、リビングの扉を開ける。
「「「ハッピー・バレンタイン!」」」
リビングに入ると大きな声が……
みんないる。マイにアンとジブル、少女冒険者4人に、魔王リナと人形ナディアと猫のモフちゃん。メイド軍団、ラパンにシャリーにケイと忍者1号2号。部屋の中が女の子まみれだ。僕に次々にチョコレートを渡していく。呆気に取られ受け取っていく。そして最後にはマイが……
「ザップ、チョコレートよ」
「あ、ありがとう……」
「みんなで、どうやったらザップにチョコレートをあげたらめっちゃ喜んで貰えるかって考えたのよ。え、もしかして、泣いちゃった?」
「いや、目が少し乾燥しただけだ」
言われて見れば、なんか目がうるうるしている。僕は強がったけど、本当は天に昇るかのように嬉しかった。
ハッピー・バレンタイン。
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