進軍
たくさんの『いいね』ありがとうございます。
「おい、ジブル、また大声の魔法頼めるか?」
「お安い御用よ」
幼女導師はまた呪文の詠唱に入る。風は止まない所を見ると、しばらく持続する魔法なんだろう。けど、流石だ。コイツはマッスル達の裸を見ても全く動じていない。正直僕でさえもSAN値がゴリゴリ削られている状況なのに……ちなみにSAN値とは、最近王都でたまに聞く言葉で、SAN値が無くなると人は正気を失うという。ちなみに一撃でSAN値が無くなるのを、SAN値直葬というらしく、さっきのマイのような状態を指すのだろう。
「おい、遅くねーか?」
魔法の完成が遅い。よく見ると、ジブルは男達の裸、特に股間にチラチラ目をやってる。それで詠唱が途切れ途切れになってるみたいだ。相変わらず残念な奴だ……
「うんもーっ、集中出来る訳ないじゃないの! う、うわ、あれデッカ……」
「あれ、デッカじゃないだろ! 集中しろ」
僕はジブルの後ろに回って目隠しする。
「うわっ、なにすんのよ、せっかくの天国が……」
「何が天国だ、地獄の間違いだろ……終わったら好きなだけ見ていいから、魔法急げ」
「わかったわわよ……」
めっちゃ早口で呪文が紡がれる。
「はい、おっけーよ」
早すぎだろ。逆にどんだけ裸に集中乱されてたんだよ。手を放すと幼女らしからぬギラギラした目で辺りを舐めるかのように見渡している。変態かよ。コイツはもう役に立たないな……
「あー、あーっ」
よし、いい感じに大声だ。
「屈強なる、帝国軍人の諸君。流石に精強な君たちでも、冬に裸は辛いだろ。暖かい火にでもあたって暖をとるがいい。アン、空に吐け!」
後ろでヒマそうに寝転がっていたドラゴンアンは立ちあがると、空に向かってブレスを吐く。
「ゴゴゴゴゴゴゴーーーッ!」
アンの口から天に向かって火柱が立つ。帝国軍からどよめきが起きる。
「端的に言う。燃えたく無かったら、消えろ!」
イメージ大魔王の低い声が辺りを包み込む。僕の言葉を皮切りに、全裸の屈強な男たちは悲鳴を上げながら。一目散に逃げ始めた。それをゆっくりと歩きながら追い立てる。
「あー、あーっ」
よし、大声の魔法は切れたな。
「アン、吼えるだけにしとけ、ジブル、風が切れたらまた頼む。征くぞ!」
ペースアップだ。僕は走り出す。
重騎士団の後は、騎馬隊、歩兵などがいたと思う。何が来ようが関係ない。お金が向こうから走って来てるようなものだ。収納に入れた武器や所持品だけで一財産になるだろう。一兵卒でも多くひん剥いてやる!
僕は金色のポータルに囲まれながら荒野をひた走る。隣にはジブル、後ろには巨大なドラゴンを従えて。ちなみに、ちゃんとポータル達にはジブルとアンには襲いかからないようにコマンドは入れた。流石に少女と幼女の裸には興味ない。
逃げ惑うマッスル達の波が割れて、次は騎馬隊が見えてくる。やる事は同じだ。命以外の全てを強奪してやる。