表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

691/2101

 重騎士団


 ガジャン、ガジャン。


 帝国の誇る無敵の重騎士が迫り来る。その隊列は乱れる事なく練度の高さが伺える。僕は得物を超大剣から馴染みのハンマーに握り変える。


 ガジャン、ガジャン。


 帝国重騎士団。来る日も来る日も重鎧を扱うための肉体の鍛錬と戦闘訓練に明け暮れ、限界を超えられた者のみ成れると言う。普通の人間なら着込んだだけで、全く動けなくなるような、金属の塊のような大鎧を着て、走り、戦う、化け物揃いだ。その鎧は弓や石弓などでは軽く傷つくくらいで、並の剣士や冒険者の攻撃でさえも弾くと言う。


 ガジャン、ガジャン。


 重騎士1人で、ゴブリン数十匹は軽く倒せると聞いている。けど、弱点はその足の遅さと、あと足場が悪い所では全く役に立たない。

 けど、ここは荒野。乾いた固い大地は彼らの能力を遺憾なく発揮できる。

 重騎士達が僕たちを囲むように進軍してくる。


 もうそろそろだな。


「ジブル、風を吹かせろ。アン、そろそろドラゴンの用意しとけ」


「わかったわ」


「りょーかいでーす」


 ジブルは呪文の詠唱に入り、アンは着膨れた服を収納にしまい、魔法のワンピースだけになる。


「え、ザップ、何をする気?」


 マイが僕のマントをクイクイする。


「いつものヤツだ」


 僕は両手を広げ、出せる限りの収納ポータルを射出する。僕をキラキラ光る皿のようなポータルが囲む。


「止めて、ザップ。今まで、いっぱい見て来たけど、やっぱり人が死ぬのは嫌! 『剣の王』は、みんな死んじゃう!」


 マイが僕の腕を引く。何勘違いしてるんだ? 僕は戦争する気は微塵もない。ここで、『剣の王』、収納から数多の剣を放ったら大虐殺になっちまう。そんな気は無い。


「マイ、俺がそんな野蛮な事すると思うか?」


「え、じゃあ、もしかして…………」


「そうだ! 行け、俺の収納ポータル。全てのものを奪い尽くせ!」


 光輝く小さな黄金の魔方陣、僕の収納ポータルは僕の能力の範囲内をランダムに飛び回る。ここまでの数になると、複雑な操作は出来ない。与えている指示は、僕から半径5メートルから範囲限界まで、地上1メートルにうかんで、半径1メートルの範囲のものを全て収納に入れる事。動くものを狙う事。辺り構わず、手当たり次第、無生物を収納にしまっていく。


「ザップ。風、吹かせるわよ」


「ああ」


 僕はジブルに答える。


「それでは、後ろでやりますね」


 アンは僕たちの後方に走っていく。距離を取ってドラゴンに戻るつもりだな。


「グゥオオオオオオオーン!」


 耳をつんざく巨獣の叫び。おお、いい感じに威圧効果のある咆哮だ。アンは絶好調だな。


 僕たちに迫ってきた、帝国虎の子の重騎士団の進軍が止まる。今や誰1人として服を纏っているものは居ない。僕たちの目の前には地獄絵図、全裸のマッチョマン達が何事が起こったのか理解できず、佇んでいる。


 そして、ジブルの生み出した強い風が吹き荒れる。冬の寒さの中、強風にさらされて、しかもアンの咆哮で正気を失い、1人1人と膝を折り蹲っていく。


「よし、マイ、チャンスだ。まだ立ってるヤツに石でも投げてやれ」


「嫌よ、何言ってるの? なにが、『野蛮な事はしない』よ。野蛮というより、下品極まりないじゃないのよ!」


「え、今までいっぱい見てきたんじゃないのか?」


「そんなものいっぱい見てきた訳無いじゃないの。戦いは沢山見てきたって意味よ。もう嫌、地獄! あたし帰るっ!」


 マイはプイッと頬を膨らませると、アンジュ達のいる方へ走り始めた。


「おい、マイ、馬鹿っ。行くなっ!」


「馬鹿じゃないわ! 馬鹿はザップよ! ベェー!」


 マイは振り返り、舌を出すと一目散に駆け出した。まじで、子供かよ! ショックで幼児退行してるのか? いかん、マイが安全地帯から出やがった。即座にポータルに新たなコマンドを出すが間に合わない。マイに光るポータルが群がる。


「キャアアアアーーーッ!」


 一瞬にしてマイの服は収納に消えて、形のいいお尻が見えたのは一瞬、いまだかつてないスピードで、マイは走り去った。

 

 あ、こりゃ、お仕置きされるな。しばらく飯抜きだわ……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ