仲間
「今回は悪いが、妾は戦えない。帝国との約定により、静観させてもらう。まあ、それ以前に人間同士の小競り合いには参入する気はないのだが」
北の魔王リナは宣う。まあ、ある意味ありがたい。彼女たちは人間に対しては過剰勢力だ。その力故に加減が出来ない。もし手伝ってもらったら地獄絵図が繰り広げられる事だろう。
「残念だが、しょうがないな。もし何かあった時は頼む」
僕は心にも無い事を言う。ずっと静観してて欲しい。それと、素肌が当たるから出来れば少し離れて欲しい。
「僕も、魔道都市が動けない以上何も出来ないな」
ラパンだ。彼女は一応魔道都市のお姫様だからな。
「ああ、お前たちにはこの街を守って欲しい。もし、帝国軍がこっちに来たら頼む」
これでメイド軍団も大人しくしててくれるだろう。ラパンは別として、大神官シャリー、忍者2人は危険すぎる。正直狂戦士だからな。
「私達は行くっすよ、今は迷宮都市にいるけど、もともと私達は王国民ですからね」
戦士アンジュの言葉に少女冒険者たちが顎を引く。彼女たちは手加減という言葉を知っている。サポートを頼むとするか。
「今回の目的は、帝国軍を追っ払う事よ。王国軍が来る前に敗走させて、戦争をさせないわ」
マイが立ちあがる。なんか、今回はやたらやる気だな。まあ、戦争を止めたいのだろう。平和が1番だ。
「俺たちは、今から帝国軍に挨拶に行ってくるが、何かあった時は応援を頼むかもしれない。その時はよろしく頼む」
僕の言葉にみんな頷く。仲間って有難いな。僕は炬燵を出て準備を始める。僕とアンは寒がりなので、丸々と着込む。リナとメイドたちは帰って、準備が終わり、僕たちも家を出る。もしかしたら長丁場になるかもしれないので、家も収納に入れる。
今回のメンバーは、僕、マイ、アン、ジブルと少女冒険者4人だ。目的地の国境付近には魔王リナのワープポータルは無いので準備運動がてら走って行く事にする。ジブルはまだ骨のままなので、アンが背負っている。
『王様には何か言わなくていいの?』
ジブルがアンの背中から問いかけてくる。
「気にしなくていいだろう。別に王国になんかしようとしてる訳じゃないからな。それに、皇帝は俺の所に直々来た。だから、これは帝国と俺たちの問題だ」
しばらく走ると、砂塵を上げる騎馬の一行が前に見える。先頭には黄金の鎧の者。明らかにさっきの皇帝達だろう。お互い最短距離を選択したからだろう。けど、何ちんたら馬なんかに乗ってやがる。
「ご主人様、燃やしましょうか? 寒いですし」
アンが僕の隣に来る。
「そんな理由で燃やすな! ちゃんと軍と合流してからだ」
「ザップ、あのスピードだと、多分半日くらいかかりそうよ」
マイも僕に併走する。
「しょうがないな。ここらへんで時間つぶすか……」
なんか空回り気味でモヤモヤするが。皇帝達より先に帝国軍の所にいってもしょうがない。
街道から少しそれた空き地に家を出して、一泊してから出発する事にした。