準備
「ザップさん、準備完了しました!」
魔法使いルルが立ちあがる
「え、何の準備?」
「アンジュ、ミカ、デルが配置についたので、いつでも皇帝に攻撃しかけられます」
ルルは大人しくなんかスマホをいじってると思ったが、仲間と襲撃の段取りしてたのか。相変わらず血の気の多い奴らだ。
「お前ら、まだ皇帝を暗殺する気なのか? 止めとけ、止めとけ。そんな事しなくても、奴が国境に戻った時くらいに、帝国軍に痛い目見せてやろう」
「ええーっ、せっかく色々配置させたのに。死なない程度にしばいて確保しようと思ってたのに……。そして、ザップの名前で帝国に宣戦布告して、帝国が蹂躙される様をドキュメンタリータッチで出版して……」
「やめんか。頼むから、俺関係の変な噂広めるの止めてくれ」
ルルはいつでも、僕の台詞をメモって自分の作品に反映させている。ルルは僕を主役の小説を書いてるみたいだが、それは結構売れているらしい。こっぱずかしいから勘弁してほしい。
「それより、アンジュ達をここに呼べ」
「はーい」
ルルは座ると、また炬燵にデカい胸をオンしている。見ちゃ駄目だ。
それよりも……
「マイ、どうしたんだ?」
さっきのマイは、明らかにおかしかった。
「ゴメン、ザップ。大丈夫……」
明らかに大丈夫じゃないけど、これ以上は聞かないで欲しいのだろう。
「おい、アン、お前は大丈夫か?」
次はアンだ。いつもかしましいコイツが終始無言だった。
「私は大丈夫ですが、なんて言うか、さっきの皇帝、始めて会った気がしなくて、なんか、懐かしいっていいますか……」
んー、懐かしいも何も、コイツがシャバにいたのは100年以上前のはず。正直訳判らないな。
「チュイース」
部屋に女の子3人入ってくる。僕らが仲がいい少女冒険者、ルルの仲間の戦士アンジュ、神官戦士ミカ、野伏のデルだ。武装したまま思い思いに炬燵に入ってくる。
「皇帝が来たそうじゃな」
次は金色のビキニアーマーの北の魔王リナ・アシュガルドがやって来た。誰かが連絡したのだろう。ヤツも炬燵に入ってくる。結構パンパンだ。ふとした拍子に足が当たりそうだ。
「ザップ、皇帝が来たんだって?」
次はメイド服の魔道都市のお姫様ラパン。元大神官のシャリー、猫耳娘のケイ、忍者ピオンとパイ、それに妖精ミネアまでが炬燵に入ってくる。もうぎゅうぎゅうで、僕の隣にマイとリナがひっついてくる。むぅ、男は僕だけだよ。天国と言えなくもないがとても居心地わるい。最近使ってないTSスキルでも使おうかと思ったが、無意味なので止めておく。
「知ってると思うが、国境付近に帝国軍が侵攻していて、さっき帝国皇帝がここに来た」
僕は事のあらましをわかりやすく説明した。