自称皇帝
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「嘘つけっ!」
バタン!
即座に扉閉めて鍵をかける。皇帝? 悪い冗談だ。帝国の皇帝が、今から侵攻しようという敵地のど真ん中に来るはずが無い。明らかに新手の変態だろう。金色だし。
ドンドンッ!
「おい、開けろ。嘘じゃない。俺は皇帝だ。証拠を見せるから開けやがれ。開けないと扉ぶっ壊すぞ!」
でっけぇ声だな。近所迷惑だ。扉をぶっ壊されるのは困る。基本的に日曜大工は僕の仕事だから。しょうがない。面倒くさいけど相手してやるか……
僕の後ろには、マイとジブルとルルも来ている。もれなく嫌面だ。
「解った。解った。話だけなら聞いてやるから、大人しくしろ」
僕が扉を開けると、自称皇帝はニカッと笑った。爽やかだな、気持ち悪い。特に白い歯がなんかムカつく。
「立ち話もなんだ。家に入れろよ」
図々しい奴だな、初対面なのに。後ろの騎士達がざわめく。いつの間にか、野次馬もちらほら集まって来ている。変なのが来るのは家の名物になりかけている。
「なんでだよ、ここでいいだろ」
僕の言葉に後ろの騎士達が頷いている。けど、こんなに立派な騎士を連れて来てるって事は皇帝うんぬんは置いとくとしても、有力な貴族ではあるのだろう。そのわがままに付き合わされてる彼らも大変だな。
「おい、ケチケチすんなよ。見ろよ、人が集まって来てんだろ。ここで話していいってんのなら、俺は構わないが、それよりも家の中でちゃーでもしばきながら仲良く話そうぜ」
自称皇帝は僕の肩をバシバシ叩く。
「陛下、おやめ下さい。魔王と呼ばれる者の家に入るなんて危険すぎます!」
騎士の1人が飛び出して来る。おいおい、幾らなんでもここで陛下はまずいだろ。いくらここの王のポルトが温厚だとしても、それは不敬罪ってやつになるんじゃ?
「大丈夫だって、俺は強いからな。さすがに、ここで暗殺しようって馬鹿はここには居ないだろ。お前らはここで待っとけ」
「ですが……」
自称皇帝は言い募る騎士を手で制する。
「おい、誰も家に入れるって言ってないぞ」
「ザップ、家の中で話すわよ」
ジブルが低い声で呟く。何故か自称皇帝を睨んでいる。もしかして知り合いなのか?
「しょうが無いわね、じゃ、お茶の準備するわね」
マイは家の奥に下がる。まあ、しょうがない。話しくらいは聞いてやるか……
「じゃ、入れ。変な事はするなよ」
僕は自称皇帝を家に招き入れた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、なんでここなんだ?」
「そりゃー、一応皇帝だから上座に座って貰わないと」
僕の疑問にジブルが答える。座る位置の事じゃないのだが。
「気にするな。俺は一向に構わん。これがコタツというやつだな。魔道都市がリザードマンを懐柔したという」
自称皇帝は金色の鎧のまま炬燵に足を入れている。脚絆が熱くなって火傷でもすればいい。
けど、炬燵販売の事は一部の人間しか知らない事のはず。実際のとこ、コイツは一体何者なんだ?