相談
「わたしは……」
まず口を開いたのは導師ジブル。
「わたしは、魔道都市アウフの評議員でもあるから、なにも出来ないわ」
まあ、そうだろう。東方諸国連合が不可侵条約を結んだ以上、ジブルが動くと国際問題になりかねない。
「アンはどうする?」
一応、奴の意志も確認する。確認するだけで決定権は無いが。
「そうですね、正直、王国も帝国もどうでもいいので、ご主人様に従いますよ」
アンはミカンを剥きながら答える。まあ、予想通りの答えだ。
「あたしは、戦争は嫌だ。なんで、戦争が起こるの? 今まで、平和だったじゃない? なんで戦うの? しかも人類同士で……」
マイの言葉はみんなどっかで考えていた事だ。魔獣、魔族、竜族など、人類を脅かす者と戦い続ける世の中で、なんで人同士が争わないといけないのだろうか?
「それは、帝国は戦争を無くするために戦ってるって言ってるわ」
ジブルが口を開く。
「国があるから争いが起きる。全ての地域が帝国になれば争いは起きない。力で全てを収め、そしてその力で人類を導いて行くって皇帝は言ってるそうよ」
ジブルは炬燵で熱弁する。けど、聞いてるみんな、ミカンなどを剥いて食している。
「けど、それって正しいの?」
マイがジブルに問いかける。
「マイさんが、そう思った時点で、それが戦争の理由よ。違う価値観がある。どっちかが折れない限り、いつか争いになるわ」
ジブルの言葉にマイは口を閉じる。こう言うのって堂々巡りだ。面倒くさいな。
「マイ、ジブル、そんな事はどうでもいい」
僕はゆっくりと言葉をつむぐ。
「俺は戦争を止める。なぜなら、嫌だからだ。マイの言う通り、仲良くすればいい。戦争したいならまずは俺を倒す事だ。一応お前達の意見は聞いたが選択権は無い。マイ、アン、ジブル、ルル、ゆくぞ。帝国をぶっ飛ばしに」
「「はいっ!」」
マイとアンからはいい返事。
「ええーっ、何言ってんですか? 私はアウフの……」
四の五の言う、ジブルを制す。
「今すぐ辞めろ。お前は今から、導師ではなくただの魔道士だ」
「……はい……」
素直でよろしい。
「えー、私も参加ですかーっ……」
ルルはなんか不満そうだ。しょうが無いな。
「猿人間魔王の名において命ず。ルル、仲間を呼んで俺に力を貸せ」
「は、はいっ!」
ルルはスマホで仲間たちに連絡する。では、帝国軍に挨拶に行くとするか。
「誰かおらんのかーーーっ!」
ん、外から大声が聞こえる。家に用事なのか?
玄関に向かい扉を開ける。そこには、撫でつけた金色の髪に金色の鎧のまるで獅子のような美丈夫が立っていた。その後ろには数名の甲冑の騎士。金色の鎧? もしかして北の魔王リナの親族か何かか?
「失礼ですが、どなたですか?」
一応少し丁寧に。偉い人っぽいから。
「我こそは、カルバーン帝国皇帝、バルバレス・マクドランであるっ!」
金色の人は腰に手を当てて大音声を上げる。ん、皇帝? そんな馬鹿な?