ゾンビの城
「よし、焼き尽くせ!」
僕は僕の跨がっている巨大な竜の頭を軽く叩く。ブレスを吐けという合図だ。僕たちの目の前には湖に浮かぶ島、そこにはおびただしい数のゾンビが蠢いている。なんか落下のダメージで、関節が変な方向に曲がっている奴とかもいて、正直地獄絵図だ。
「ゴゴゴゴゴゴゴーーーッ!」
ドラゴン形態のアンが放ったブレスがことごとくゾンビを焼き払う。首を横にフリフリして、微塵も残す事なく消毒していく。あとには、黒い消し炭だけが残った。そしてそこに収納にしまっていたお城をズレる事なく配置する。
「ミッションコンプリート。じゃ帰るぞ」
僕はドラゴンアンに跨がって、お城を後にした。
今日僕たちが受けていた依頼は、お城に巣くうゾンビの掃討。面倒くさいので、いちいち中にはいってぶっ倒すのではなく、お城を一旦収納にしまって、僕の収納には生き物系は入れる事が出来ないので、(ゾンビが生き物かは微妙な所だが)残ったゾンビを退治するという方法を取った。
今回は湖の中にあるお城という事だったので、地盤が緩そうなので穴を掘って埋めるのは難しそうだし、それに炎を使っても延焼の恐れが無いので、最近働いてないドラゴン娘を連れてきた。やっぱり、ドラゴンブレスは便利だ。あとには殆ど何も残らないし、いい感じに消臭効果もある。威力が高すぎるのが難点だが、使い方次第だ。
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「お前達、何をしてるんだ、早く討伐に行かないか!」
僕たちが近隣の村の食堂で、食事をしていると、今回の依頼者のなんか忘れたけど貴族かなんかの偉そうなおっさんが店に走りこんで来た。
「え、全部倒しましたけど?」
「何を言ってる? 儂の城はにはまだゾンビがうようよいやがるぞ」
「え、本当ですか? では、すぐに行きます」
「えー、ご飯途中ですよ!」
「確認終わってから、また来るぞ」
僕は釈然としないが、ごねるアンを連れて、また城に向かった。
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「ゴゴゴゴゴゴゴーーーッ!」
果たして城はゾンビだらけで、また、同様に城を収納に入れ、アンにゾンビを消毒して貰う。
確かにさっき、ゾンビを全滅させたはずだが? という事は、城の中でゾンビが発生しているのか?
城を島に戻し、アンには人間になって貰って、突入する。
「あ、アレですよ、ご主人様!」
しばらく城内をゾンビを倒しながら彷徨うと、アンが叫んだ。
アンの指差した方には1枚の鏡、それからゾンビがのそりと半身を出している。僕よりもアンの方が気配察知には長けている。なんてったって僕よりアンの方が獣に近いからな。
ゾンビを倒して、鏡を収納にしまう。一件落着だな。ゾンビを無尽蔵に召喚する鏡か。多分、この鏡は誰かが嫌がらせに置いたんだと思うが、もったいない。大事に使わせてもらうとしよう。
そして、後日、王都に冒険者ギルド監修の冒険者の訓練も兼ねたゾンビアトラクションが完成した。僕はアイデアと鏡を売っただけだ。大盛況らしいので、今度遊びに行こうと思う。