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 村祭り(前編)


「すまんが、兄さん、追加報酬を出すから手伝ってくれんか?」


 旅一座の座長は僕に深々と頭を下げる。とは言われても、僕に出来るだろうか?


「兄さん、大丈夫、適当に合わせてくれればこっちでなんとかするから」


 座長さんは僕を拝み倒す。こう言うのには弱いんだよな。


「解りました。出来るだけがんばります」


「ありがとう、兄さん、恩に着る」


 しょうがない。やれるだけやってみるか。座長さんは喜んでテントから飛び出していった。そして僕の衣装を持ってきた。ハリボテの騎士の鎧と、ミノタウロスのかぶり物だ。とりあえず着てみて、具合を試してみる。思ったよりも視界が狭い。こんなの着て上手く動けるだろうか。けど、まあ、やるしか無いな。軽く座長と打ち合わせを始める。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 今回僕が依頼を受けたのは、山奥の村の村祭りに呼ばれた旅一座の護衛だ。報酬は微々たるものだが、山奥の村の人々を楽しませるために、危険を冒してまでそこに向かう一座の心意気に思うところがあったのでついつい引き受けてしまった。

 僕が小さい頃、祭りに来る旅芸人は何よりもの楽しみだったので、その手助けなら喜んでしてもいい。

 幌馬車に乗り旅一座と山奥の村を目指した。王都の北東の山奥に村はあるそうで、たまに魔物も出るらしく、今回は護衛を雇ったとの事だ。けど、事件と言えば、ぬかるみにはまった馬車を押し出した事くらいで、旅は順調だった。

 旅の途中聞いた話では、旅一座のメインの演目は劇で、金色の鎧の騎士がミノタウロスに攫われたお姫様を倒すというものだそうだ。脚本を見せてもらったが、アクションあり、笑いありの楽しいものだ。一座は座長も含め6人で、上手く着替えたりしながらそれ以上の数の登場人物がいる劇を演じるそうだ。劇は昼と夕方の2回公演で、後の時間は各々のジャグリングなどの持ちネタを披露するという。

 なんか楽しそうだけど、人を楽しませる芸を僕は持っていないから、見る側で楽しませてもらうとしよう。

 1日かけて村に向かい、1日公演して帰る予定だ。当然僕はマイ達には連絡している。

 村についたのは夜中で、僕たち一座は村長さんの家に泊めて貰い、なんとか手足が伸ばせるくらいの部屋で雑魚寝した。一座には2人女性もいるのだが関係無しだ。なんか冒険者みたいだな。旅芸人も冒険者も自分で明日を切り開く実力世界という所では似たようなものかもしれない。けど、沢山の人に喜んで貰えるって所は、冒険者より楽しいかもしれない。そんな事を考えながら、僕は眠りについた。

 

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