ドラム缶の迷宮
「うぉおおおおおーっ!」
僕の体が巨大化し、着ている服が弾け飛ぶ。体に力が漲る。僕の体は瞬時にして倍くらいの大きさになる。よし、これならいける。僕は闇の中から現れた、巨大なキノコの化け物に立ち向かう。殴っても殴っても殺れなかった奴が簡単に吹き飛ぶ。
「ヒャッハー! かかってきやがれ!」
それから群れ寄る巨大なキノコの化け物と、亀の化け物を蹂躙しまくった。
今僕がいるのは『ドラム缶の迷宮』と呼ばれる、30年位前に流行ったと言われる王都のそばにあるアトラクション系の迷宮だ。誰が何のために作ったのかは謎だ。武器やアイテムは持ち込む事はできず、その迷宮にあるものだけでクリアを目指す迷宮だ。しかも親切設定で、死亡したと思ってもスタートに戻るらしい。直接戦闘の訓練になりそうだと思って向かう事にしたのだが、今日は誰もついてきてくれなかった。その理由は迷宮の仕様にある。解っている事だけで、迷宮にある宝箱に入っているという魔法のキノコを食べると巨大化して強くなれるという。
「それって、間違いなく食べたら裸になるやつよね」
マイには軽く拒否られた。
「あ、スミマセン。私、生キノコはちょっと……」
ドラゴン娘は裸より生キノコを食する事がイヤらしい。
「え、大きくなれるのですか? しかも裸で!」
幼女導師の言葉はスルーする。彼女は今日も仕事のはずだ。
と言うわけで止むなく1人で向かう事にした。
僕は裸でキノコと亀をなぎ倒していく。そして出て来た宝箱を殴って開ける。野蛮な事にこの迷宮の宝箱は殴らないと開かない。なんと、今まではキノコと金貨しか出てこなかった宝箱から、光る花が出て来た。触っても持っても何も起こらない。そうだ、キノコは食べ物だった。と言うことは、なんかお腹を壊しそうだけど意を決しそれを咀嚼し呑み込む。以外に味はしなく、大根をそのまま食べたような味だった。
「うぉおおおおおーっ!」
体に力が漲る。しかも体が赤色に染まっている。手に力を感じ集中すると、なんと火の玉が出てくる。近づいてくるキノコにそれを放つと、一撃で消え去る。よし、そういう事か。
それから僕は裸で火の玉を投げつけながらキノコや亀をやつけまくった。途中で火の玉が効かない黒い亀みたいなものも出てくるが物理で押し切って先に進む。
「ゴオーーーッ!」
溶岩のエリアをくぐり抜け先に進むと巨大な亀の化け物が炎を吐いてきた。
「シャアアアッ!」
僕は火の玉を投げ続ける。相手の炎をよけながら、火の玉を投げ続けると、なんとか亀の化け物を倒す事ができた。そして、奥の方に進むと、奥からヒラヒラな格好の女性が現れた。
「ありがとう。勇者さま。お陰で助かりました」
「え、終わったのか? なんていうか、宝とか報酬とかないのか?」
「はい、ですからお礼を申し上げております」
彼女としっかり話したら、ここの迷宮のクリア報酬はお姫様の感謝の言葉だと言う。昔はこれだけでみんな狂喜乱舞して喜んでたという。まじか?
彼女的には、裸の男性を見られて眼福だと言う。そんなの知るか。風呂屋の番台にでも立てばいい。
なんかモヤモヤしながら迷宮を後にした。
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