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 竜撃


「それでは、今日は『竜撃』という技を練習します」


 エルフのデル先生が高らかに宣う。白い道着に黒い帯。サラサラな金髪は1つにまとめてある。彼女は自称、『野伏レンジャー』だが、誰にもその認識は無い。その拳は岩を砕き、その妙技はオーガですら軽く宙を舞う。華麗な容姿と裏腹に、僕には悪鬼羅刹にしかみえない。彼女の職業クラスを敢えて口にするなら、格闘家グラップラー力士レスラーが妥当なところだろう。

 今日は久々のデル先生の格闘技講座。日が照っていて暖かいので、場所は荒野なのにも関わらず、フルメンバーだ。僕、マイ、ドラゴン娘アン、マッスル黒エルフのレリーフ、子供族ホップのパムだ。フルメンバーは久しぶりな気がする。


「竜撃の竜ってドラゴンの事ですか?」


 アンが口を開く。


「はい、ドラゴンの事です」


 デルが首肯する。


「ドラゴンの名前がついてるって事は激しそうね」


 マイが目をキラキラさせている。いつの間にこんなに好戦的な子に育ったのだろうか?

 

「そうですね、激しいって言ったら激しいですけど、この『竜撃』のドラゴンは東方のドラゴンです」


「「東方のドラゴン?」」


 マイとアンがハモる。このパターンはこれからデル先生の解説モードに入りそうだな。長くなりそうだな。


「私達が普段目にするドラゴンは、決してアンさんの事を悪く言ってる訳では無いですが、トカゲのような感じの体ですよね」


 普通、普段ドラゴンを目にしないよ、というツッコミは置いといて、こういう言葉の端々の配慮は僕も見習いたいものだ。トカゲと言われたら不機嫌になるアンも気にして無さそうだ。


「ですが、東方のドラゴンは蛇のような体に手足がついたような形です」


 んー、手足がついた蛇か。あんま強そうじゃないな。


「それで、蛇みたいに巻き付いて攻撃すると言われています。ですから、東方で竜とか蛇とかの名前がついている技は、手を絡みつかせていく関節技系の技の事が多いです。まあ、実際には見た方が早いですよね、ザップさん」


 デルが僕に手招きする。んー、何でいつも実験台は僕なんだ? まあ、レリーフは身長デカ過ぎるし、パムはちっちゃ過ぎるからやむなしだな。それに関節技系なら怪我したりしないだろ。それに、関節技系ならデル先生との密着ご褒美もありそうだしな。

 そんな風に、考えてた時期が僕には有りました……


 僕とデル先生は対峙し、構える。


「では、いつものアレをお願いします」


 ああ、いつものアレね。いつものアレで解る自分がなんかモヤモヤだ。いっつも右ストレートしか放たないみたいじゃないか。と言ってもそうなんだけどね。


「とおぅりゃーっ!」


 手加減した右ストレートを放つ。さすがに練習で本気は出さない。デルが前に出ながらかわす。さすが当たる訳ないか。次の瞬間、デルの姿が僕の前から消え失せた?


「………………ッ!」


 気がついたら地面に頭を押し当てられていた。右の肘が焼けるように痛い。何が起こった?

 僕はふらふらと立ち上がる。


「ザップ、腕、腕っ!」


 マイが駆け寄ってくる。見ると僕の右手は構えたはずが肘から先がプラプラしてる。


「ウゲッ!」


 マイにエリクサーをかけて貰って回復する。


「おいおい、少しは加減してくれよ!」


「スミマセン、ザップ兄さんだとついつい……」


「ついついじゃねーよ」


 僕は加減してたのに、問答無用で腕を折りやがった。サイコパスかよ。


「では、解説タイムです。ザップさんゆっくりお願いします。相手の拳を肩越しにかわします。そしてこの瞬間は正対していて相手のもう片方の手に対して無防備なのでかわしながらも右手を上げて相手の手を巻き取るようにした瞬間にその手で下に突き込みます。上手く肘から絡めるようにすると、簡単に肘を持ってけます」


 ヤバい、力が入らない。前に宙返りする形でなんとか逃れる。


「お前、また折ろうとしただろ!」


「スミマセン、つい」


「ついじゃねーだろ」


「そうですね、こうしましょう、練習用にパペットゴーレムをだしましょう」


 デルはわざとらしくポムッと手を打つ。始めからそうしてくれよ……


 確かに竜撃は強力で、蛇(竜?)が巻きつくようだった。


 いつかデルに下克上してやる。僕はそう誓い鍛錬を続けた。


 読んでいただきありがとうございます。


 久しぶりにエッセイ書きました。『PCR検査受けにいきました』です。下にリンク張ってますので、よろしくお願いします。


https://ncode.syosetu.com/n0567hl/

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