豚を攻める!
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「今日は豚を攻めるぞ!」
僕は宣言する。そうだ。今日は豚だ豚を攻めてやる。
「解りました。豚を攻めるのですね!」
キラキラした目でドラゴンの化身のアンがテーブルに身を乗り出す。こいつは、豚が大好きだからな。
「解りました。私はブタにはうるさいですよ」
幼女導師がフワサッと髪を掻き上げる。アラサーと思われるが、イキった子供にしかみえない。
「じゃ、あたしは注文してくるわ」
マイは席を立つと、キッチンの方に向かって行った。
僕たちが今いるのは、家の隣のレストラン『みみずくの横ばい亭』。もうすぐ夜だから、バーに切り替わる前だ。とは言っても、メニューはそこまで変わらず、ランチセットが無くなるだけだ。
豚を攻めると言っても決して、太った豚のような人物をいたぶる訳では無く、今日の晩飯は、豚尽くしの焼き肉を食べてやろうという、ただそれだけだ。それには理由があって、年末年始はどこでも贅沢して牛をしこたま食べるので、お店の牛が品薄という事で、今日は心ゆくまで豚を堪能する事になった。
「じゃあ、始めるわよ。今日は調理長に掛け合って、メニューに無いものも貰って来たわ」
テーブルのコンロを囲んで、様々な肉の皿が並ぶ。正直豚バラ以外は何が何だか解らない。これって食べ物か? と思えるようなものもある。
「まずは、豚バラね」
マイが焼き肉奉行と化してコンロの上の網に肉を並べて焼きはじめる。豚バラは安定の美味しさだ。これだけでも僕は満足出来る。
「次は、豚ヒレよ」
脂がなく、あっさりとしていて、これなら誰でも食べられそうだ。旨いけど、僕的には少し物足りない。少し脂が欲しいな。
しばらく、バラとヒレを楽しんだあと、網には豚足が並べられる。
「なんだコレ、全く臭くないな!」
僕は豚足は臭いというイメージがあったのだが、これには全くそれが無い。
「しっかり香草で半日ほど煮こんだらしいわ。あたしもこれなら食べられるわ」
マイは器用に豚足の骨を手で外している。僕達はむしゃぶりついているのに、なんかエレガントだ。あれが女の子の豚足の食べ方か……
僕達は一端手と顔を洗うために中座する。
そして、そのあとはホルモン祭りだった。シロコロという、ドーナツみたいなのは脂がのって噛み締める度に旨味があり、ガツと言うのは牛のミノみたいだった。コリコリというのは豚の心根、大動脈だそうで、牛に比べて柔らかく旨味が強く、僕はかなり気に入った。それよりも気に入ったのが豚のハラミ。癖がなくしかも旨味があり、脂も少なく柔らかい。とても気に入ったのだけど、1頭から少ししか取れないそうで、またある時だけ出して貰える事になった。
僕達は、心ゆくまで豚尽くしの焼き肉を楽しんだ。