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 魔橋


『魔橋を渡ってくれる方募集。報酬は大金貨10枚』


 ドラゴン娘アンから紙切れを受け取って読む。なんかこ汚い紙だな。どんだけ貼ってあった依頼なんだ?


「ご主人様、最高の依頼、見つけてきましたよーっ! なんと、橋を渡るだけで、大金貨10枚、大金貨10枚ですよーっ!」


 ドラゴン娘アンがまるでご飯を見つけた犬のようにはしゃいでいる。ぶるぶる揺れる尻尾が幻視出来るようだ。けど、ドラゴンスタイルでこれをやられたらすっげぇ事になりそうだな。


 今、僕たちは王都の冒険者ギルドで依頼あさりをしている。最近儲かる仕事がなく、マイは諦めて買い物に行っている。僕も諦めて地道に得意なドブさらいでもしようかと思ってた時に、アンが嬉しそうに走り寄ってきた。


 その受け取った紙をよく見てみる。右上に小さくXマークが書いてある。うん、これは間違いなくエックス依頼だな。引き受ける者が居なく、ギルドで塩漬けになっている依頼だ。間違いなく厄介そうだが、報酬が魅力的なので、職員に詳細を聞いてみる事にした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「あれがその橋ね。綺麗……悪魔が作ったものにはとても見えないわ。遠いけど、来て良かった」


 マイは、橋の絶景に目を奪われている。


 山間の湖にかけられた橋の前に僕たちはいる。その湖はとても深く、水棲の獰猛な魔物が沢山生息し、船でも渡るのは困難だという。その湖の1番くびれた所に橋はかかっている。石造りの橋は完全な半円を描き、湖面に映る影を合わせて綺麗な円が僕たちから見える。静謐な湖に描かれる幻想的な光景にしばし僕らは見とれてしまった。


「それで、誰が行きますか? なんかお腹空いてきたです」


 静寂を破ったのはドラゴン娘。そうだな、僕たちは観光に来た訳じゃない。仕事をしないとな。


 この橋が結んでいるのは、山間の村と山から王都へと至る村。この橋を渡らないならば、かなり迂回する事になると言う。吊り橋を架けても架けても、しばらくすると水棲の魔物に落とされる。それでも橋を架け続けていたのだが、橋が落ちてるときに村に流行病が蔓延する。薬が足りなく火急の時に、村人の前に悪魔が現れた。人1人差し出すならば、頑丈な橋を架けると言う。果たして美しく頑健な橋が架けられて、村は救われる。悪魔は言った。次に橋を渡る者をいただくと。村でどれだけ協議しても答えは出なく、誰も橋を渡る事なく、冒険者に依頼する事にした。細々と村で稼いだお金は積もり積もって大金貨10枚になったとの事だ。


「じゃあ、行くとするか」


 僕たちは橋の渡り口に向かう。


「お前達は、ここで見ててくれ、ヤバくなったら手を上げる。アン、ここではドラゴン禁止な」


 僕は橋に貼られた石畳を歩く。おおー、絶景だ。この橋は凄いな。馬車でもびくともしなさそうだ。これを作った悪魔ってすげーな。


「お前が私に全てを捧げるのか?」


 橋半ばで声がする。高くも低くも無い、性別不詳な声だ。おおっ、出て来たか?


「いや、捧げない。捧げて欲しいなら、力で奪いとれ」


 僕は収納から『瘴気のハンマー』を出す。今日の武器はコイツだ。このハンマーには瘴気という訳の解らんものを撒き散らすのと、叩いた敵を下痢にするというゲスの極みな能力がある。


「出ろ、出ろ、出ろっ!」


 ハンマーに力を注ぎ、瘴気を撒き散らす。黒い靄が僕の体を包み混む。ハンマー言うには、この瘴気には暗黒系の魔法を和らげる効果があると言う。と言う訳で大盤振る舞いだ。じゃんじゃかじゃんじゃか瘴気を漏らし捲る。


 目の前に厳つい漆黒の全身鎧を着た者が現れる。コイツが悪魔か? る気満々だな。

 そいつの目が光るが何も起こらない。魔法系だと思うが、僕の瘴気はそんなのにやられる程チンケじゃない。

 

「私の魔力が効かない……なんだ貴様は? もしかして魔王……」


「そんなのどうでもいいだろ。負けたら勝った方に従う。受けるか?」


「いいだろう」


「じゃ、行くぜ」


 先手必勝、僕はハンマーを構え走り寄る。悪魔はどっからか大盾と片手剣を出す。おおっ、建築技術と魔法だけじゃなく、収納も使えるのか。悪魔にしとくのはもったいない。是が非でも家に連れて帰りたい。よりよい生活が送れそうだ。

 そこそこ本気で連打するが、剣で捌かれ、盾で受け止められ、何発かヒットするが、鎧に阻まれる。うん、ソコソコだな。隣の店のメイド連中といい勝負だろう。武具の性能でなんとか戦えてるだけだな。

 1度距離を取り、ハンマーを下段に構える。寒中水泳でも楽しんでもらうか。

 手加減してハンマーを薙ぐ。その前に武具全てを強奪する。


「な、なにっ!」


 え、可愛い声、もしかしてまた女の子かよ。武具に変声能力がついてたのか。鎧の中から現れた、長身気味の女の子は、力が抜けた僕のハンマーを両手でなんとか押さえ込んだ。あーあ、触っちゃったよ……

 僕はバックステップで距離をとる。


「お前の負けだ……」


「何を言ってる。私はまだまだ戦える。うっ!!」


 女の子はお腹を押さえて蹲る。むう、加減し損ねて彼女は下着だけだ。服まで強奪しちまった。


「早く降参して、トイレ行ったがいいと思うぞ」


「いやだ、何があっても私は屈しない!」


 女の子はフラフラと立ち上がる。しょうが無い。瘴気でハンマーの効果をブーストするか。


「出ろ、出ろ、出ろ、出ろっ!」


 僕から噴き出した瘴気が彼女に纏わり付き、彼女の顔が苦痛に歪む。


「だっ、出してたまるかっ!」


 すぱーん!


 ざぼーん!


 なんだ、いきなり何かに湖に叩き込まれた。あいつの特殊能力かっ?


「ザップー、何やってんのよー!」


 何とか水から顔を出すと橋の上には激怒したマイが……


 なんとか、僕の勝利という事にはなったが、マイには散々しぼられた。アンが全力で悪魔を村まで運び、どうにか悪魔は尊厳を守れたそうだ。






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最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
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