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 荷物持ち収納整理をする(後)


「いいぜ、どっからでもかかってこい!」


 僕は手のひらを上にクイックイッする。んー、なんか三下みたいだな。やられフラグでない事を祈る。


「かかってくるのは、あなたの方です。ご主人様、いや、ザップ。私は炬燵こたつでただゴロゴロしていた訳では無いです。様々な本を読んで、新たな必殺技を編みだしました。私はもう、以前の私とは違うんです。これからは私が主人で、あなたが家来です!」


 そう言うと、アンは羽織っていた半纏はんてんをブワサッと翻し脱ぎ捨てる。そしていつものワンピース姿になる。なんか、自身ありげだけど、十中八九大した事ないだろう。とりあえずデコピンくらいで許してやるか。

 僕は全力で駆け出す。


「必殺!」


 アンはその場で腰に拳を当てて仁王立ちする。その髪の毛が逆立つ。なかなか凝った演出だな。少し格好いい。


古竜超新星ドラゴン・ノヴァ!!」


 アンの姿がブレたと思った瞬間には、僕は全身に衝撃を受けて吹っ飛ばされていた。地を這うように迫り来る小さな影。速い! 空中で体勢を整えようと思った瞬間には、その小さな影、アンから手が伸びて僕の腹に吸いこまれる。


 ドゴムッ!


 腹に響く重い衝撃、僕は更に吹っ飛ばされ、大地に叩きつけられる。


「たいした事ないですね。あなたの攻撃は二度と私に届く事は無いでしょう」


 起き上がった僕の前にはアンが腰に手を当てて偉そうに立っている。そして、クイッと赤い液体の入った瓶を取り出して飲み干す。あれは魔力回復のポーション?


古竜超新星ドラゴン・ノヴァ!」


 アンの声が聞こえた瞬間には、また衝撃を食らい吹っ飛ばされている。今度は顔だけはガードしたので先ほどよりはダメージが無い。何だ? 奴は何をしてやがる?

もしかして奴は爆発系の魔法を手に入れたのか? 僕と同じく脳筋一直線だと思ってたのに裏切られた気分だ。

 収納からポータルを出して足場にし空中で方向転換し、アンの追撃をかわす。その時気付く。やたらアンの胸がプリンプリン揺れている。……また下着つけてないな。こんな時に何考えてるんだ僕は……ん、下着?! 奴は間違いなく戦闘前には付けていた。と言う事はこれは魔法なんかじゃない!


「ザップ、降参しますか?」


 にこやかな笑顔でドラゴン娘は歩いてくる。余裕だな。手品の種は割れてるのに。


「お前が俺の主人になるってのも、しばらくは面白かったかもしれないが、残念ながらそれは無さそうだ」


「へぇー、減らず口ですか? まだお仕置きが足りないみたいですね」


 アンの目が細められる。いつもこういう表情をしてたら賢そうに見えるのにな。


「お仕置きされるのはお前の方だ。あとでお尻ペンペンだ」


「そうですか、お尻ペンペンされたいのですね、あとで存分に生お尻ペンペンして差し上げます」


 む、生お尻ペンペン。コイツは変態かよ。


「かかってこい! ぶちのめしてやる」


「フッ、大口を。それではいきますっ! 『究極古竜超新星アルティメット・ドラゴン・ノヴァ』!!!」


 アンの姿がブレる。ここだっ! 僕は重心移動と体重をかけた右ストレートを放つ。その先に確かな手ごたえ。大地に両足が突き刺さり、押し戻されそうになる。


 魔法ならまだしも物理では負けん!


 更に踏み込み拳を振り抜く。


 バキバキバキバキッ!


 何かがへし割れるような音がして、僕は巨大な物体を殴り飛ばす。それはぶっ飛びながら小さくなり、白い人形みたいなものになり飛んでいく。そして大地を削り横たわる。死んでねーよな?

 奴はただ、ドラゴンに戻り瞬間人化する事を繰り返していただけだ。それでもあれだけの威力がある高速変化は凄まじい。洞窟の中や建物の中なら無敵だろう。必殺技を名乗る価値がある。

 ん、いかん、奴、動かないな。


「大丈夫かっ?」


 僕は駆け出す。


「ザップ、きちゃ駄目っ!」


 先にアンにたどり着いたマイに止められる。そうだ、奴は裸だった。


 あ、体起こした。マント着させられてる。もう行ってもいいだろう。


「おい、アン大丈夫か?」


 アンは震えながらマイにすがりつく。


「マイ姉様、ザップに、いやご主人様におっぱいめっちゃ殴られました。ううっ……」


 ドラゴン娘は滂沱と涙を流す。うわ、変な所に当たってたのか。でもドラゴンだろ?


「ザップ、女の子を虐めちゃ駄目よ」


 マイがジト目で僕をみる。


「何言ってやがる。虐められてたのは俺の方だろ」


「ザップは自覚持ったがいいわよ、全力出しちゃ駄目でしょ、化け物なんだから」


「お前に言われたくないわ」


 ジブルはアンをなでなでしてる。化け物変化がネタな奴にだけは言われたくないな。


「ご主人様、申し訳ございませんでした。二度と生意気な口はききません」


 アンは土下座する。うわ、めっちゃ全体的にドン引きされている空気が……


 斯くして、下克上にはならなかったけど、それからしばらくはアンは僕を見るだけで涙する生き物と化した。んー、なんか美味いもの食わして懐かせるしかないか……

 

読んでいただきありがとうございます。


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