華麗なる蹴り技
「飛燕旋風脚!」
僕の放った、体の捻りに全体重を込めた蹴りがトロールを吹っ飛ばす。その首はあり得ない方向を向いている。フッ、決まったな……
僕はストンと着地して、仲間たちの方を振り返る。
僕たちは今、迷宮都市の迷宮に潜っている。最近は寒いせいか、いい仕事、特に討伐系が無く、体を動かすためにここに来た。
この迷宮のいいところは、暖かい。それとワープポータルで好きな階層に行けるし、迷宮を出ると街なので生活にも困らない。特に大通り沿いには様々な店が軒を並べ、大陸の最先端の流行の発信地の内の1つになっている。
閑話休題、今日のお題は蹴り技だけで討伐する事。メンバーはマイとドラゴン娘アンと幼女導師ジブルに今日は罠と索敵要員に忍者ピオンを借りて来た。
弱すぎる魔物が出た時の露払いもピオンはしてくれてたんだが、その戦い方は華麗の一言に尽きた。群れ寄る魔物を殴る、蹴り飛ばす。ぶん投げる。言葉にすると荒々しいが、実際は滑らかな動きでまるで舞うかのように軽やかだった。特に際立つのが蹴り技。何故か今日はメイド服の彼女は華麗に且つ全くスカートの中身を晒す事無く、魔物達を蹴り飛ばしていく。正直格好いい。それで、時間を少しとって、それらを教えて貰った。最近は日々の柔軟体操のかいもあって、なんとどうにか僕の足は直角以上に上がるようになった。上手くジャンプと組み合わせたら、自分の身長位の者の頭も蹴れる。
前回し蹴り、後ろ回し蹴りはデルに教えて貰ってたけど、新たに手に入れたのは、相手に背を向けて馬の蹴りみたいに放つ後ろ蹴り、前方宙返りから足を出して踵を落とす浴びせ蹴り、あと、前回し蹴り、後ろ回し蹴りからその回転力を乗せて放つ『旋風脚』。
それらを実演してもらって(パンツは見えなかった)、軽く練習して実戦に臨んでいる。
マイ、アン、ジブルと戦って、次は僕の番が来た。因みに、幼女導師がローブを翻しながら、おっさんみたいなトロールを蹴り倒していくのは何とも言えない光景だった。
「俺の番だな」
僕は部屋に入り見渡す。はずれか、トロール3体しかいない。さっきのジブルの時は6体いたのに。
「ウゴゴゴゴッ!」
僕を見つけてトロール達が駆け寄ってくる。おっさんみたいな生き物じゃなく、女の子にそうして欲しいものだ。
一体目を飛び回し蹴りで吹っ飛ばし、二体目を後ろ蹴りで吹っ飛ばす。そして、体を捻り位置調整し!
「飛燕旋風脚!」
黄金の右足がトロールの頭を捉える。トロールはきりもみしながら壁の方に吹っ飛んでいく。フッ決まったな……
僕はストンと着地して、仲間たちの方を振り返る。
「なかなか良くなってきただろう」
誰も褒めてくれないので、あざとく攻めてみる。
「……そうね……」
マイは歯切れが悪い。
「マイさん、みんな思ってる事は一緒だと思いますよ。言ってあげた方がザップのためだと思いますよ」
ん、ジブル、何のことだ? 僕が見ると目を逸らす。
「私に任せて下さい。ご主人様、ご主人様って足、短いですね」
「……………」
なんだと……
薄々気付いてはいたが……
やっぱり僕の武器はハンマーだ……
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