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 姫と筋肉 ラビリンス (5)


「おお、なんという素晴らしいお姿」


 しゃがれた声が部屋に響く。その声には、耳でも解る感動が溢れている。僕は収納から出したマントに包まり、その中から声の主を仰ぎ見る。多分初老のローブを纏った男性。その顔には年齢からか辛酸からか深い皺が刻まれている。その人がレリーフの方を見ながら涙しながら震えている。

 筋肉すきなのか? それとも男好きなのか? 金色に輝く、限界まで筋肉を詰め込んだ大男。僕なら初めてアレをみたら、即座に脱兎のように逃げる。ラパンうさぎなだけに。心の中で一人大喜利をしてると、レリーフが口を開く。


「豆をくれないか?」


 ん、豆? レリーフ、何言ってるんだ? 


「へっ?」


 爺さんは気の抜けた声をあげ、キョトンとしている。まあ、初対面の人間?に豆をせがまれるのは長そうな人生でも初めてなんだろう。


「私の筋肉が豆を求めている。すまんが豆をもってたら分けてくれないか?」


 おいおい、持ってる訳ねーだろと心の中でツッコむ。


「豆ですか? 少しはありますけど……」


 爺さんが虚空から袋を取り出す。持ってるんかーい、というツッコみは置いといて、収納スキル持ちか、中々便利そうな爺さんだな。

 まあ、それ以前に、ここは何処で、アイツは何者なんだ。レリーフと遊ぶのに夢中で、すっかり忘れていた。


「ありがとう」


 レリーフは袋を受け取ると、その口を開け手のひらに豆を出し、躊躇わずに口にする。おいおい、毒でも入ってたらどうすんだよ。


「炒り豆か。足りんな。むぅ、仕方ない。また呼ぶか」


「待て待てっ! あいつは呼ぶな!」


 つい、包まったマントから出てしまう。さすがにまたアンデッド呼ぶのはまずいだろう。それよりも、まだコイツ腹減ってるのか? それよりも大事な事あるだろ。


「それより、報酬をいただいたという事は、望みを聞いてくれるのですね、魔王様」


 爺さんがレリーフにすがるような目で、訴える。ん、僕はスルーかよ。けど、豆が報酬? 昔話かなんかかよ。


「しょうがないな。私で力になれる事なら承諾しよう」


 ほう、豆で言う事聞くのか。なんか頭悪そうな会話してるな。

 巻き込まれたら、面倒くさいけど、レリーフは見てるうちは飽きないな。僕はこのまま空気に徹する事にしよう。 


「それで、まずは、おきな、ここは何処か説明してくれないか?」


「あ、そうでしたね、ここは『ダディ・ロングレッグスの迷宮』と呼ばれる所です」


 む、『ダディ・ロングレッグス』? 西方の言葉で『あしながおじさん』という意味だよな。なんかイミフだな?


「ほう、そうか、それで何をすればいいのだ?」


 やっぱり駄目だ。聞いた事の無い迷宮の名前だけじゃ何処かわからない。


「ちょっと待て、ここは何処の国に属してるんだ?」


「魔王様、なんですかこの小娘は? 気持ち悪い金色してますけど、魔王様の奴隷かなんかですか?」


 爺さんが失礼な事を言う。金色なのはレリーフも一緒なのに態度違いすぎだろ。とりあえず、なんらかレリーフが暴走する前に一通りの情報は仕入れておきたいので、少し腹立つけど微笑みを浮かべてみる。


「お爺さん、僕の名前はラパン。こちらはレリーフです。召喚魔法陣で僕たちを呼んだのはあなたですか?」


「そうか、金色の魔王様の名前はレリーフ様というのか。レリーフ様、ささこちらです。行きましょう」


 爺さん、会話が成り立たないな。それに、金色の魔王と言えばリナさん。人違いじゃないのか? まあ、とりあえず移動するみたいだからついていってみるか。

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