姫と筋肉 ラビリンス (4)
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「くらえっ!」
僕の黄金の黄金の右ストレートが、レリーフの胸板に突き刺さる。さっきは奴が座っていたから顔面を狙えたが、今はたってるので止むなし。跳び上がって殴るのは悪手。壁、弾力がある壁を殴っているみたいだ。
「ほう、さすがだな。ケイトが喜んでいる。次はスザンナにもご褒美をもらえないかな?」
言ってる事は訳分からないが、要はもっと殴れという意味だろう。気持ち悪いヤツだ。
「望むところだ!」
1回間合いを取り、再び今度は全身を使って体重も乗せた防御全捨ての黄金の黄金の右ストレートを放つ。
ドゴンッ!
うっ、ぶっ飛ばせると思ったけど、振り抜けない!
「スザンナも喜んでいる。いいぞ、いいぞ、適度な打撃は筋肉を育てる。もっと私の筋肉達を喜ばせてくれ」
ううっ、なんだと、僕の『剛力』のスキルで底上げされた打撃がアイツには筋トレにしかならないのか? 聞いた事がある。筋肉を叩いても筋肉がつくと。もしかして物理では、アイツは僕より上? 僕は飛び退り集中する。
「物理が駄目なら、魔法だっ! 魔道都市アウフが誇る魔法を食らわせてやるっ!」
なんか言ってる事が負け犬っぽいな。
「そうか、私も専門は魔法だ。死霊魔術などは、生活魔法に毛が生えたようなものではあるが、お相手して差し上げよう」
レリーフは集中し、虚空に右手で魔法陣を描く。
魔法戦は、相手との魔法の読み合いだ。相手が何を使うか読み、それを防ぐかそれより強い魔法で打ち消すか瞬時に判断するしかない。僕の特技は精神魔法。地味だけど、適正のおかげで無詠唱、ほぼノータイムで繰り出せる。
「炎の両眼」
一瞬目を閉じ、魔力を溜め、目を開くと同時に解放する。魔法名を叫ぶのは、攻撃の時に気合を入れると力が上がるのと同様、魔法を放つ時に叫ぶと若干威力が上がる。必殺の幻覚魔法。これでレリーフもイチコロだっ!
レリーフはいつの間にか腰だめた両手を前に突き出す。
「筋肉大砲!」
レリーフの突き出した両の手のひらから、黒い玉みたいなものが僕の顔目がけて飛んでくる。気持ち悪い事にそれには幾つもの歪んだ顔がついてるように見える。それは放たれた僕の魔力を吸い込みながら僕に迫る。何とかかわすが、幻覚魔法は全て吸いこまれてしまった。さっきのアレは多分低級のゴースト系の魔物を固めて放ったものだろう。なにが筋肉だ。僕の魔法はその霊団に今いい夢を見せてる事だろう。レリーフ恐るべし。瞬時に身代わりを放つとは。たまたまなのか?
「おおっ! 召喚は成功したのか?」
誰かの声がする。僕は自分が金色なのを思い出し、瞬時に亀のように丸まった。