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 姫と筋肉 ラビリンス (1)


「ラパンじゃないか。夜遅くまで働いて感心だな」


 僕は、奴には出来るだけ近づかないようにしていたのだが、みんな手が離せないので、しょうが無くお酒のお替わりを持っていった。当然、気づかれて声をかけられる。


「ひ、人違いじゃないですか? 私の名前はラファですよ?」


 取り敢えず、高い声で誤魔化してみる。酔っ払ってるみたいだから乗り切れるかも。


「じゃ、ラパンじゃないか。お前が魔道都市のラファ姫様って事はみんなしってるぞ。変な声出して風邪でもひいたのか?」


 げっ、余計な事までばれてやがる。奴の名はレリーフ。激しい筋肉で体を覆った、自称死霊術士ネクロマンサーだ。実際は脳筋筋肉バカの黒エルフだけど。


「いや、元気だよ。てゆうか、なんでお前だけ1人なんだよ、仲間はどうした、仲間は?」


 レリーフのテーブルは奴しかいない。他を見渡してもソロで飲んでるのはコイツだけだ。


「デュパンとジニーは酔っ払ってザップさんの家で寝てる。パムは、ほれ、そこで歌ってるだろ」


 コイツはどういう体をしてるんだろう。さっきから度数の高いアルコールをカパカパ飲んでるけど、全く酔っ払った素振りが見えない。


「ほらよ、飲めよ」


 グラスを差し出す。


「なんか、お前、私の扱いがなんか雑ではないか?」


 即座にレリーフはグラスの中身を半分にする。


「そんな事ないよ。なんかつまみ持ってきてやるから待っときな」


 僕は厨房につまみを取りに戻る。




 僕の名前はラパン・グロー。冒険者だ。ここは『みみずくの横ばい亭』僕の仕事先だ。いつもはここでウェイトレスをしている。普通は夜になったら上がるのだけど、新年と言うことで、特別に今も働いている。夜も更け、お客さんも減り始めそろそろ眠たくなってきた所だ。


 乾き物を幾つか持ってレリーフの所に行く。なんか嫌な予感がする。レリーフに関わったらロクな事が無いのに、つい絡んでしまった。さすがに熟練の冒険者たちと、うちの強力なメイド達が居る中でなんか起こったりはしないだろう。


「ほらよっ。奢りだ」


「ああ、ありがとう」


 レリーフは慇懃に頭を下げる。もしかしてコイツは結構育ちがいいのでは?


「ラパン、何か魔法を使ったか?」


 レリーフが僕に問いかける。


「え、何もしてないけど?」


「何だ、それは?」


 レリーフは僕の足下を指差す。金色の文字と図形からなる魔法陣が現れている。


「げっ、召喚系の魔法陣!」


 術式は読み取れないけど、このタイプは召喚系だ。しかもかなり増幅ブーストしてある。いかん、これはどっかに飛ばされるやつだ。しかも発動間近。うち消せない。目の前にはレリーフがいる。止むなしっ!


「道連れだっ!」


 僕は咄嗟にレリーフに抱きつく。


「おいおい、私の筋肉が素晴らしいからって、淑女がはしたないぞ」


 僕の足下の魔法陣から光が溢れる。よしっレリーフもロックオンされている。魔力の奔流が魔法陣から溢れだす。耳鳴りがする中、僕達は光に包まれた……




 光で眩んだ目が慣れてきて、回りが見えはじめる。


「なんだ、ここは、地下室か何かか? それより、酒がこぼれた。お替わりをたのむ」


「お替わりなんかあるかっ!」


 ボケなのか本気なのか分からないが、つい声を荒げてしまった。


 ここはどこだ?

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